人生最高にキツかった大学病院での5年間
大学病院で働いた5年間は、これまでの人生でいちばん体力的にキツかったかも……。看護師は資格をとっただけでは意味がなく、実務を積まなければ、医療スキルも緊急対応も身につきません。そのため最低3年間は修業するつもりで大学病院を選んだものの、これが超ハードな職場だったのです。
生死のかかった現場で張り詰めた緊張のなか、ひたすら患者さんの処置に走る毎日。そこにロリータ・モデルの仕事が加わります。朝まで夜勤をこなして帰宅し、髪を金色にカラーリングしてそのまま雑誌の撮影へ急行、なんてことも普通にありました。ひとえに若かったから乗りきれた、としかいえません、今思うと。
でも、だったらモデルをやめよう、とはなりませんでした。むしろカメラの前でスポットライトを浴びる、この看護師とはまったく違う仕事が、心のバランスをとるのに最高に作用してくれました。ドクターとカメラマン、病棟と撮影スタジオ、両方を行き来できるのが楽しくて仕方なかったのです。
「そんな格好をするからミスするんじゃないの?」
ただ、周囲の反応は温かいものばかりではありませんでした。「ひとつのことを極めるのがえらい」という風潮があったから「なぜ看護師に専念しないの?」「どうして看護師になってまでモデルを続けるの?」と問われたことは何度もあります。通勤中の私を見た先輩から「そんなチャラチャラした格好をするからミスするんじゃないの?」とまで言われたことも。
仕事中はもちろんナース服を着るけれど、それ以外では何を着たっていいはず。内心そう思いつつも、病院という職場は言葉の強い人が多いとわかっていたので、無難な受け答えをするようにしていました。
私にはこことは違うもうひとつの世界がある、と考えたら、理解はしてもらえる人にしてもらえればいい、と思えたのです。同期など応援してくれる人たちもいましたし、ささやかな自己主張として、聴診器をピンクにしたり、キティちゃんのボールペンを使ったり。そうやって気持ちを切り替えました。