※本稿は、青木美沙子『まっすぐロリータ道』(光文社)の一部を再編集したものです。
「ピノコになりたい」から始まった
「看護師になりたい」と最初に思ったのは、小学校高学年のころ。
母が水泳のインストラクターをしていたので、幼いうちから身近に“働く女性”のモデルがはっきりとあったのです。だから「私も大人になったら働くんだ」と自然に思うようになりました。ただ、私自身は水泳を習っても特別うまくなるわけではなく、勉強ができるわけでもない。働くにしても「手に職をつける」、何か資格をとってそれを生かせる仕事がいいんじゃないか、と思っていました。
当時「ナースのお仕事」や「ER緊急救命室」といった医療ドラマが大人気で、テレビっ子だった私は、毎週かじりつくようにして見ていました。医療を通じて人々を救う姿のカッコよさといったら! 私もこんな大人になりたいな。看護師という仕事にあこがれが芽生えたきっかけでした。そうして出会ったのが、医療漫画ということで手に取った『ブラック・ジャック』の「ピノコ」。見た目は幼い女の子なのに、主人公の医師、ブラック・ジャックを看護師として支える姿に夢中になりました。
あまりにコミックスを読み込むものだから、とうとうページが擦り切れてしまって。かわいいだけでなく、仕事もできる。テレビや漫画のヒーローのおかげで「私の行く末はナースだ!」と早くから目標が定まったのです。
高校時代に読者モデルとしてデビューした
そんなわけで、中学を卒業したあとは看護科のある高校へと進みました。当時は「高校で3年間学んで准看護師の資格をとる→短大の看護科などを卒業して国家試験に合格=20歳で正看護師になる」というのが最短ルート。目指した道はそれです。
というと、目標に向かってまっしぐら! みたいに聞こえるかもしれませんが、本音をいえば、迷いました……看護科へ進学したら、その後はよほどのことがない限り、正看護師へ向かってひたすらに突き進むことになります。15歳で人生を決めてしまうような、大きな決断をすることが怖くないわけありません。けれどそれ以上に、ドラマや漫画で夢見た看護師に自分もなれるというワクワク感のほうが、はるかに大きかったのです。
中学時代は部活動や受験準備に明け暮れていたけれど、晴れて進学してからは、青春を取り戻す! くらいの勢いで毎日を謳歌しました。授業や実習の合間を縫ってファストフード店で初めてのアルバイトをしたり、おしゃれに興味がわいて原宿デビューしたり。週末のたびに電車に揺られて船橋からあこがれの原宿へ、友達と一緒に繰り出しました。そうしてティーン雑誌のスカウトの目に留まり、読者モデルとしてデビューすることになります。