コンビナートが巨大なのはクジラ解体と同じ原理

また、石油からハイオクガソリンをつくったときに副産物として発生するエチレンという気体が、いろいろなプラスチックをつくるのに有用な原料になります。石油の分解ではブタンという分子も得られ、合成ゴムの原料になります。

クジラやアンコウは捨てるところがないといわれるほど解体して、さまざまな料理(クジラからは鯨油もとれます)に使われます。同様に、石油からのガソリン製造にあわせて、さまざまな分子を捨てることなく徹底的に利用しようとするのが石油化学工業です。

その性格上、工場を分散せずに1カ所に集約して効率化する必要があります。それが石油化学コンビナートです。コンビナートとはロシア語で「結合」を意味し、ソ連で発電所や工場を集約して配置したものの名称です。欧米では「コンプレックス(複合体)」と呼んでいます。

「エチレン」「プロペン」の誕生

石油化学工業の始まりはアメリカです。

1920年にスタンダードオイルがガソリン製造において、大きな分子をちぎって小さなガソリンの分子にする、接触分解で生じる切れ端の端材のようなプロペン(プロピレン)C3H6の分子からイソプロピルアルコール(2-プロパノール)CH3CH(OH)CH3を製造しはじめました。

それまではプロペンは邪魔者として燃やされていましたが、災い転じて福となすで、捨てるものから有用な商品に転換することが可能となりました。

1921年、ユニオンカーバイドがウェストヴァージニア州の油田で、石油とともに噴出する天然ガスに含まれるエタンC2H6の分子を加熱分解して、水素原子を二つ外すことでエチレンC2H4をつくる工場を稼働させました。

この世界初のエチレン製造のための小さな石油化学工場の誕生から30年で、エチレンが文明を支える王者になっていきます。