リタイア生活中に突然倒れ、心肺停止に

例1)あなたは75歳。高血圧で薬は飲んでいますが、ほかに大きな病気もなく、なんら不自由なく暮らしています。今も定年退職した会社に週に3回、参与という肩書で出勤、とくに重責を押しつけられるわけでもなく、後輩たちと談笑するだけでいくばくかの給与をもらい、退職金と年金で悠々自適の生活です。

妻には「俺は寝たきりになってまで生きていたくない。身体じゅうに点滴やら管を入れられて病院で最期を迎えるなんて絶対勘弁してほしい。自分で買ったこの家、住み慣れたこの家で家族みんなに看取られて、苦痛なくコロっと安らかに死ねれば他に望むことはない」と常々言っていました。

そんなある日、後輩たちと仕事帰りに軽く飲んで帰宅した玄関先で、急に胸が苦しくなって倒れこんでしまいました。驚いた妻は救急車を呼び、そのまま救急病院へ運ばれましたが、到着時にはすでに心肺停止の状態。心臓マッサージと人工呼吸器が取り付けられ、フルコード(※1)の救命処置が取られましたが、心拍は再開することなくそのまま救急室での死亡確認となりました。

※1:心肺停止等の場合にありとあらゆる救命処置を行うこと

脳梗塞の治療をしたら容体が急変し…

例2)あなたの母親は95歳。過去に軽い脳梗塞で投薬治療は受けていますが、麻痺もなく、認知症もなく、日常生活に必要な機能動作も保たれてれおり、平穏に暮らしていました。

そんなある日、あなたの妹とその息子が遊びに来て、みんなで夕食の食卓を楽しく囲んでいたところ、母親は急に目眩と吐き気を訴えはじめました。すぐに救急車を呼ぼうとしたが、意識のある本人は「このまま家にいたい。死んでもいいから病院には絶対に行きたくない。延命治療はしてほしくない」と言い張ります。

しかし看護師である妹が、病院で診断だけでもつけてもらおうと説得、けっきょく救急搬送となりました。病院では脳梗塞との診断でカテーテル治療を提案されたため、緊急の家族会議。「これまで元気だったのだからこの治療に賭けてみよう」と本人を説得して、緊急カテーテル治療を受けることとなりました。

しかし治療開始後すぐに容体が急変、主治医の判断で人工呼吸器が装着され、手術室から出てきたときには意識もない状態で、そのまま集中治療室へと運ばれていき、けっきょくその夜、息を引き取りました。