「まともに学校に通ってなかったから、勉強しないといけない」
面会を続けて、しばらくたつと「僕はこれまでまともに学校に通ってなかったから、勉強しないといけない」と勉強への意欲も口にするようになりました。
そこで、ドリルや教科書類を差し入れたりもしました。
このような変化を見ると、重大な結果を引き起こしてしまったとはいえ、やはり、少年は少年なのだ、と思ったものです。
たった一言に激高して、壁をなぐって、拳が血だらけに
他方で、K少年には、これまで関わった少年とは異なる特徴も多くありました。
ひとつは、一緒に弁護活動をしている他の弁護士と頻繁にトラブルを起こすことでした。
なにかK少年なりの「怒りのスイッチ」があるのでしょう。他の弁護士と面会した際に弁護人が放ったたった一言に激高して、壁をなぐって、拳が血だらけになったこともあったそうです。
そんな出来事があったこともあり、他の弁護人と私との間ではK少年の印象がまったく異なり、評価が分かれることになりました。それ以降、面会は私が中心で行うことになりました。
また、K少年は、環境の変化や刺激に極端に弱いところがありました。
鑑定留置の関係で少年鑑別所に移されたとき、その後また警察署(留置所施設)にもどされたとき、激高して感情的になったあとなどに、これまで積み重ねた会話の内容を忘れてしまったり、それまでの学習意欲がガクンと落ちる、という連続性のなさを何度も体験しました。
このような極端な反応は、これまでの少年事件では経験したことがないものでした。