一方、どこにもメーカー名の表示されていないPBがある。イオンの「トップバリュ」だ。販売者は「イオン株式会社」、問い合わせも「トップバリュお客さまサービス係」の連絡先住所とフリーダイヤルの電話番号が記されているのみだ。
「『メーカー表示があるものは、誰がつくっているかわかるので安心だ』という声も消費者から聞かれます。確かにメーカー名を書いたほうが、最初は売りやすいかもしれません。しかし、小売り名とメーカー名が併記されていることによって、製造責任も販売責任も中途半端になる危険性がある」と堀井氏は言う。
「過日に起きた中国・天洋食品の餃子事件では、JT、CO―OPという一流企業が揃って説明責任を果たすことができませんでしたね。おそらく、工場検査も商品検査も、天洋に任せていたのだと思います。食の安全を脅かす事件が引きも切らないいま、お客様はこれまで以上に品質や安全・安心について厳しい目を向けています。自社の名で商品を売るということは、商品の全責任は自社でとるということ。そのための管理体制を自社のコストで行うのは当たり前です。そうでなければ自社ブランドとはいえない」(堀井氏)
しかしメーカー名を記さずに、どうやって安心・安全を担保していくのか。
「当社では『トップバリュ』をつくっていただく際、必ず該当工場の検査、安全診断を実施しています。そこでは、『日本でつくっているから安心』『大手がつくっているから安全』とはいえない結果も複数出ています。メーカーさんの商品を仕入れているだけでは結局、自分のところのお客様は守れない。メーカー名が書かれているから安心だと思うのは、正しい考えではないのです」(同)
イオンでは、今年8月末までに一次原料を、今年度中には二次原料までを含めてすべてを公開する予定だ。労働環境、労働基準、地球環境にまで踏み込んで、生産者としての責任を果たすという意思表示である。