パン、パスタ、即席めんをはじめ、食品の値上げが止まらない。代わって脚光を浴びているのがPBだ。「おいしくて半額以下」を可能にする小売り各社の取り組みに迫った。
1カ月分の醤油が3日で売り切れる
原油・原材料価格の上昇、株安・円高・ドル安と世界規模で経済構造が変動している。景気は減速する一方、物価は上昇を続けるスタグフレーションに、消費者の危機意識は高まり、生活防衛を強める中、割安感が目立つプライベートブランド(PB)商品への支持が俄に集まっている。
PB商品とは、小売業者が独自に企画・開発した商品であり、メーカーに製造を依頼し、小売業者が自主ブランドを冠して販売責任を負う商品だ。現在、イオンでは「トップバリュ」、セブン&アイ・ホールディングスでは「セブンプレミアム」、西友では親会社のウォルマートのPB「グレートバリュー」といったブランドを展開する(図2)。
同じカテゴリーのナショナルブランド (メーカーがつくって全国規模〈=ナショナル〉で販売している商品のこと。以下、NB)商品より、総じて1~4割程度安いのが最大の特徴である。
2007年末からパン、カップ麺をはじめとした食品について、大手メーカーが一斉に値上げを発表するなか、イオンが昨年11月30日、自社PB「トップバリュ」24品目の値を下げたところ、軒並み飛ぶような売れ行きを見せた。なかでも醤油は1カ月分の在庫を3日で売り切った。インスタントコーヒーに至っては直前の11月26日に国内で6割以上という圧倒的なシェアを持つネスレが値上げを発表したこともあり、18カ月分の在庫が1週間でなくなったという。
08年2月期、「トップバリュ」の売り上げは2647億円。07年5月には、PB開発専門会社としてイオントップバリュ株式会社を立ち上げた。イオンは3年後の11年2月期までに、小売事業(連結)に占めるトップバリュの売り上げを20%、7500億円に伸ばす計画だ。
全国に3218店の加盟店舗を持ち、グループの年商は3兆7100億円に上る最大手ボランタリーチェーン、シジシージャパン(以下、CGC)でもPBカップ麺の売り上げは昨年比6倍増。
CGCとは、1973年、オイルショックの混乱のなか「お客様に良い商品をより安く、安定的に提供できるパワーを持つためには、全国規模でまとまることが必要」という考えに基づき、各地の中堅・中小スーパーマーケットが結集して生まれた組織だ。独自商品を企画・開発し、加盟店企業に商品を提供するいわば“PB専業会社”である。PB需要に呼応し、小売り各社はPB商品の拡大を急ピッチで進めている。