図3は、トップメーカーのカップ麺(NB)と、大手小売りのカップ麺(PB)の価格構造を比べたものだ。

まずは納入価格をご覧いただきたい。NBが120円なのに対し、PBは55円と半値以下。この価格差は、図にあるとおり、リベート(メーカーが仲介料として卸売業者に支払う費用)、拡販費(値引き)、広告宣伝費によるものだ。

最大で2倍ほどのNBとの価格差もさることながら、宣伝費をかけずとも飛ぶように売れるのはなぜか。それは店頭を見れば一目瞭然だ。PBはターゲットNBとの価格差がわかるよう、NBの隣に並べるだけでよい。いわばNBの商品力、宣伝力をうまく拝借した商品なのである。

原価に注目すると、NBの原価は48円、PBは44.55円と、原価も3.45円程度PBのほうがわずかに低い。一般的に、NBカップ麺の原価率は約40%といわれる。対してこのPBの原価率は81%となっている。売価が半額以下だからといって、激安の原料を使っているというわけではないようだ。

流通事情に詳しいプリモリサーチ・ジャパン代表の鈴木孝之氏は、その仕組みを次のように説明する。

「大量生産、買い切りを交換条件に、小売りがメーカーと直接交渉し、PBの仕入れ原価を大幅に引き下げています」

ロットが多いほど、仕入れコストは下がる。裏を返せば、条件となる最低ロットをクリアできないと、PBをつくることはできない。

PB開発では、調達の構造、素材、代替素材、商品仕様、資材、鋼材、製造委託先、生産法、生産工程、物流の各段階において、徹底してコストを見直す。

「製造工場は9割方海外。人件費、不動産を中心にコストが圧縮されており、いまではPBのほとんどが中国や東南アジアで生産されている」(鈴木氏)

輸送コストひとつ取っても、海外で生産するメリットは大きい。商品を国内トラックで動かすより、コンテナ単位で、船で輸送するほうが断然安いのだ。たとえば、ある商品を運ぶ際、大阪から東京へトラックで運ぶ輸送費よりも、シンガポールから大阪へ持ってくる船賃のほうが安いという。こうした仕組みによって、低価格を実現している。