メーカーにとっては、値上げを了承してもらい、自社のNBを置いてもらうのがいちばんよい。しかし、取引先である小売りの機嫌を損ねて、棚から外されることをメーカーは最も恐れている。実際、「NBのままだと値上げせざるをえないが、PBにしてもらえれば何とか価格を据え置きできる」と、自らPBの共同開発を持ちかけてくるメーカーもいると神戸氏は話す。

「メーカーさんから、『値上げさせてください』と言われても、うちは『ダメだ』と突っぱねる。小売りで、メーカーの値上げ交渉に素直に応じるところなんてどこもありません。『値上げするならもう商品を置かない』とはっきり言う小売りもいます。『棚から追い出されず、値段据え置きですむ方法はないか』というのは、いま多くのメーカーが抱える課題でしょう。その苦肉の策として、メーカー側から商品のPB企画を持ち込まれるケースが増えているのです」(神戸氏)

流通の歴史のなかで、価格決定権は常にメーカーにあった。ところがいま、それは小売りの手に移りつつある。圧倒的な販売数量を武器に、NB商品をPB商品へと形態を変えさせ、値段を据え置かせるまでの力を大手小売りは持ちはじめている。

この値段なら買う!という“絶対的”な安さ

アメリカのスーパーセンターを思わせるベイシア店内。利便性を考え、ワンフロア構造をとる。取材中も納豆が飛ぶように売れていった。

アメリカのスーパーセンターを思わせるベイシア店内。利便性を考え、ワンフロア構造をとる。取材中も納豆が飛ぶように売れていった。

「当社のPBには、ターゲットにしているNBより、3割から5割安い売価を設定しています」(神戸氏)

実際、ベイシア西部モール店(群馬県伊勢崎市)に足を運ぶと、目を疑うような破格な値段のPB商品が店頭に並べられていた。豆腐1丁35円、納豆3パック60円、缶コーヒー1本29円……。特売ではなく、毎日この価格なのだ。

現在、93店あるベイシアの店舗は、その立地を活かし一店舗あたりの売場面積1万平方メートルという巨大規模。1日の来客数は平日6000人、週末には1万人を超え、商品を大量に売りさばく。PB価格の設定においても、ベイシアはメーカーに対し強気の姿勢を見せる。