ラクダは牛肉に近い

事前にリクエストしておけばラクダの肉とかも並ぶ。串焼きにするだけでなく、シチューのようにして煮込む。ラクダ肉は牛肉に近い味がして私はかなり好きだ。

発掘調査の最中、用事でダマスカスやアレッポのような都会に行く際にレストランでランチを食べることがあった。先ほども言ったが、食べるのが趣味のような私にとっては夢のような時間である。

私が大好きだったヒツジの脳みそ

私が一番好きだったのはヒツジの生肉だ。最高に上品なユッケのような味がした。

そしてもう一つがヒツジの脳みそのフライだ。フライと言ってもコロッケやトンカツのようにたっぷりの油の中で揚げるようなものではなく、薄くスライスした脳みそにパン粉を付けて表面を焼いたものだ。ムニエルとか、ウインナーシュニッツェル(牛肉をたたいて薄く伸ばして揚げた、ウィーンの代表的な料理)に近いだろうか。

よく言われることだが、ヒツジの脳みそはフグの白子のような食感と味がする。まったくその通りだと思う。ヒツジの脳みそは世界的に見ればそれほど珍しい食材ではない。フランス料理でも普通に使用されている。

日本人にとってはまだ認知されていないというに過ぎない。食材なんてその人の生まれ育った環境で大きく変わってくる(私は関西の超ディープなダウンタウンで生まれ育ったので、ホルモンは子供の頃からおやつのようなものだった)。

大城道則『考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話』(ポプラ社)
大城道則、芝田幸一郎、角道亮介『考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話』(ポプラ社)

砂漠の遊牧民にとっては、ヒツジが最も身近な食材であっただけだ。そして脳みそを含むその内臓も。海を知らないサハラ砂漠の遊牧民が松葉ガニやシャコの見た目を気持ち悪がり、恐れて食べないのと同じだ。

後で聞いたことだが、ヒツジの脳みそを喜んで食べたのは隊員の中で私だけだったらしい。日本人は基本的に食に関しては保守的だ。確かに今振り返るとヒツジの生肉も私が率先して食べていたような気がする。

食だけではなくシリアでは色々な経験をさせていただいた。海外発掘調査中の食に関する私の思い出には、良いものも悪いものもあるが、他の隊員たちにとって、日本ではゲテモノの類に入る食べ物を嬉々として食べる私は恐怖の存在だったのかもしれない。

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