D4DR社長/コンサルタント 藤元健太郎(ふじもと・けんたろう)●1967年東京都生まれ。1991年電気通信大学電気通信学部卒。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。日本初のCGMサイト関心空間社取締役、経済産業省産業構造審議会情報経済分科会委員、青山学院大学ExectiveMBA非常勤講師などを歴任。

選択と集中の失敗にもがくシャープ

数年前まで優良企業であったシャープが苦しんでいる。液晶という得意分野に「選択と集中」した経営戦略はむしろ評価される対象であった。しかし、テレビ向け液晶の市場はあっという間に価格破壊と在庫の山となりソニーやパナソニックも大幅な戦略転換を余儀なくされる事態となった。ソニーやパナソニックは事業領域が広いため他の事業へのシフトという戦略がとれるが、シャープにとっては選択と集中していた液晶が中核事業であり、さらに液晶技術を応用した次の成長商品と期待されていた太陽電池市場も価格が暴落するというダブルパンチを受けてあえいでいる。

唯一の望みは絶好調のアップルのiPhoneやiPad向けの液晶部品供給であり、サムソン以外の部品供給先を増やしたいアップルからの大量調達とアップルの製品組み立て主力企業の鴻海グループからの出資などが現在再建への希望の星となっている。ただそこは、部品メーカーとしての再出発であり、鴻海グループがどこまでシャープの完成品メーカーとしての価値を感じているかはまだ見えてこない。

→シャープの誤算
液晶頼み、値崩れ直撃 理想の経営モデルにも限界

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120902/biz12090221160006-n1.htm

そのシャープが力を入れていた事業にGALAPAGOS(ガラパゴス)というサービスがある。自慢の液晶を使った独自のタブレット端末に電子書籍などのコンテンツを加えたサービス事業であり、2010年12月に鳴り物入りでスタートしたが、1年も経たない段階で大幅に路線変更を余儀なくされ思うような結果が出ていない状況だ。残念ながら、端末がよいのかコンテンツがよいのか、ほかの何かなのか、まさに顧客としてはこの「サービス」の価値が何なのか伝わらないものになっている。ターゲットは恐らくシニア層なのだろうが、もしコンテンツ価値で差別化するとしたら岩波文庫のコンテンツが全部まるごと入って20万円など、「リタイアした後ゆっくり楽しんでください」くらいのわかりやすい価値づくりが必要だったのだろう。