D4DR社長/コンサルタント 藤元健太郎(ふじもと・けんたろう)●1967年東京都生まれ。1991年電気通信大学電気通信学部卒。野村総合研究所在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングをスタート。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを立ち上げる。2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。日本初のCGMサイト関心空間社取締役、経済産業省産業構造審議会情報経済分科会委員、青山学院大学ExectiveMBA非常勤講師などを歴任。

拡大するシェアハウス

シェアハウスが急速に増えつつある。元々ルームシェアやシェアハウスというとお金を節約するための手段のようなところがあったが、最近増えているシェアハウスは少し赴きが違っており、住人同士で向上するための場だ。例えば元麻布にある元麻布農園レジデンスは家賃も15万前後であり決して安いほうではない。しかし都会の一等地にも関わらずなんと農場があり、農業体験ができるだけでなく、農家が定期的にやってきて有機野菜を一緒につくるという学びがあり、さらに収穫した野菜をみんなでパーティを開催して食べるというイベントまである。都心の貴重な土地を農地としてみんなでシェアするというコンセプトがベースにあるシェアハウスなのだ。

→元麻布農園
http://motoazabu-farm.com/

他にも最近のシェアハウスは住人同士で朝会を開催し、ビジネスプランを評価しあうなどの活動も盛んだ。向上心の高い住人同士がお互いのスキルや経験などをシェアするという側面も強くなっている。そして何よりも以前と異なるのはITネットワークの存在だ。Facebookのグループ機能を使い、住人同士はパーティイベントの参加者を募ったり、風邪で部屋から出られないときに体温計を持ってきてもらったり、普段のコミュニケーションをSNS上で行うことで、より共同生活を濃密で利便性の高いものにしている。新しく入居する住人も最初から自己紹介をSNS上で行うことで、全員がすでに知り合いの状態からスタートでき、打ち解けるスピードがとても早いという効果が出ているそうだ。女性にとっても都会のワンルームマンションは誰が住んでいるかわからない不安があるが、シェアハウスはお互い面識のあるコミュニティであるため、逆に男性達のなかに混じっていても安心感はとても高いらしい。

このようなシェアハウスはいずれ高齢者にも広がるだろう。高齢化社会の進展とともに独居老人の単身世帯が急速に増えているが、それと同時に買い物難民や孤独死などの社会問題も増えている。シェアハウスがシニア世代に広まることで、コミュニティが形成され、一人で食事をする機会が減る。やはり人間食事の時が健康状態もよくわかる。最近食欲がないなどを周囲の人がいち早く気づくことで健康面のお互いの相互ケアが生まれる。またシェアハウスのようなスケールをつくることで単身よりもネットスーパーなどのビジネスも活用しやすくなり、買いもの難民の課題も解決が期待される。まさにかつての長屋のような世界がいまいちど求められていると言えるかもしれない。住宅メーカーも最近は2世帯だけでなく3世帯住居にも力を入れ始めている。経済的なメリットだけでなく、子育て、孫育て、介護など現実的に家族が世代を超えて限られたリソースをシェアしていかなければならない現実が日本にはたくさん生まれている。