「戦略的M&A」で規模拡大を狙う
資本提携した相手は、岡山県内で焼却・水処理施設の維持管理や修繕工事を営む西日本設備管理株式会社(岡山市)だ。同社は事業拡大のなかで農業に参入しており、シナジー(相乗)効果に期待して下村青果商会との提携を決めた。
「近く高知県内で栽培面積を2ヘクタール増やして既存のハウスと合わせて3ヘクタールにする計画があります。ゆくゆくは県外での横展開に期待しています」(下村さん)
農業は異業種と比べM&Aが活発ではない。あっても、経営不振の企業に資本参加して経営の救済を目指す「救済型M&A」が多かった。
下村さんは「M&Aの仲介を依頼したコンサルタントから『農業のM&Aは引退するから、あるいは倒産しそうだから吸収してほしいというパターンがほとんど。こんなに戦略的に成長を目指したM&Aは日本で初めてじゃないか』と言われた」と話す。
技能実習制度の廃止で人手不足に拍車がかかる
高知県という労働力を確保するうえで恵まれているとは言えない立地にありながら、若者を惹きつける。そんな下村青果商会のビジネスモデルは、日本の野菜生産を持続可能にするうえで参考になる。
全国的に野菜の生産現場における人手不足は深刻だ。その解決のために外国から労働力を受け入れており、2022年には4万3562人に達している。農業関係で外国人技能実習生の受け入れがとくに多いのは茨城、熊本、北海道、千葉といった野菜の大産地である。
外国人技能実習制度は農業に従事する外国人労働者の実に7割を集める。ところが今年5月、政府の有識者会議が廃止を求める中間報告書を法務大臣に提出した。同制度が廃止されれば、産地は今まで以上の人手不足に陥りかねない。