「このままだと、なにか問題起こしてしまいそうで…」
しかしIくんは暗い表情で続けた。
「オレ、もういやなんです。このままだと、なにか問題起こしてしまいそうで…」
チュ氏は言った。
「オマエ、バカなことを考えるんじゃないぞ」
この時チュ氏は、Iくんが自殺するか、あるいは脱兵するかもしれないと思ったという。
軍隊での自殺や脱兵はたまにある話だ。手榴弾を防弾チョッキの中に押し込んで自爆した新兵の話や、彼女に逃げられ、銃と実弾を持って脱兵し、銃撃戦の末、射殺された事件なども起こっている。
目玉が木の枝に引っかかり、こちらを見ていた…
別の人物によれば、軍隊の先輩から、次のような壮絶な話を聞かされたという。
その先輩はキムサ(憲兵)として、北朝鮮との間のDMZ(非武装地帯)付近の部隊に配属されていたが、その先輩が兵長の頃、ある新兵が自殺した。
先輩はその日は非番だったので寝ていたが、自殺があったとなると陸軍本部から偉い将官が大勢やって来るので、ゲートの警備兵としてかり出された。
その時、先輩に対して「自殺した新兵の目玉が見つからないので捜せ」という命令が来た。口にM-16の銃口をくわえて足で引き金を引いたので、顔の半分が吹っ飛んだらしい。
先輩は気持ち悪かったので、新兵に命じて付近を捜索させた。すると少しして、野原に分け入った新兵が「ギャーッ」と悲鳴を上げた。
自殺した新兵の目玉が木の枝に引っかかり、こちらを見ていたという。
「目玉というのは意外にでかいもんだぞ」
先輩はそういって、まじまじと彼の顔を見たのだという。