“逆算思考”であれもこれも手を出してしまう

ところが、親たちの関心事は、もっぱら「何をやらせればいいか」だ。昔も今も、中学受験をするからには、できるだけ上の学校を目指したいと考える家庭が多い。その考え自体を否定するつもりはないが、どうも今の親たちは「○○をすれば、子供の成績がグングン上がる」「小さい頃から○○をやらせておくと、受験に有利に働く」と、“何をやらせたらいいか情報”に飛びつきがちだ。おそらく共働き家庭が増えたことと、あふれるネット情報が大きな要因になっているように感じる。

親である自分が忙しく、子供の勉強を十分にサポートできない分、「わが子のために良さそうなもの」があれば、できるだけ早いうちからやらせておきたいという“逆算思考”であれもこれもと手を出してしまうのだ。

先を見据えて、早くから準備をしておくことは、賢い考えだと思う。しかし、子育ては大人同士の関係で成り立つビジネスとは違って、「これをやっておけばスムーズに事が運ぶ」という単純な展開にはならない。「これをやっておけば、必ず勉強ができる子になる」という因果関係は存在しないのだ。

子供の「気分」に合わせて親がサポートするしかない

そもそも子供は気分で動く生き物だ。大人のように、この目標を達成するためには、「いつまでにこれをやって、いつまでにこれを終わらせておく」といったタスク型の行動は取れない。まして、遊びたい盛りの小学生が、遠い未来にある受験のために、「毎日頑張って勉強をしなければ!」と、自分を奮い立たせることなんてできない。どんなに大人びた子でも、そこまでの自制心は育っていないからだ。

では、どうしたらやる気を起こすことができるのか――。これはもう子供の「気分」に合わせて、親がサポートしていくしかない。それにはまずわが子をよく観察すること。この子は何をやっているときに楽しそうにしていて、何が好きで得意なのか。どんなときに気分が乗って、どういうときに気分が乗らないのか。そして、どういう気分であれば頑張れるのかをよく観察し、気分が乗っていないときは、ちょっとだけ頑張ればできそうなことをやらせてみて、頑張っている様子が見られたら褒める。

母親と一緒にアルファベットを学ぶ子供
写真=iStock.com/Hakase_
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