※本稿は、『デジタルテクノロジー図鑑 「次の世界」をつくる』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「1枚のデジタルアートに75億円」の衝撃
2021年、「ビープル(Beeple)」というアーティストがリリースした1枚のデジタルアートが約75億円という耳を疑うような値段で取引されました。
「NFT」という言葉が一躍知られるようになったのは、おそらく、この驚きのニュースがきっかけです。ちなみに、世界で初めてNFTが発行されたのは記録上で、2014年とされています。
時系列的には、その後、NFTコレクションの「クリプトパンクス(CryptoPunks)」やNFTゲームの「クリプトキティーズ(CryptoKitties)」が、トレンドに敏感なユーザーの間で人気を博し、2021年のNFTブレイクに至ります。
実際のところ「NFT」とは何なのか。
「NFT」は「NonFungibleToken(ノン・ファンジブル・トークン)」の略。「ノン・ファンジブル」とは「代替不可能」の意。したがって「代替不可能な価値をトークン化したもの」が「NFT」ということです。
NFTはダイヤモンドのように「唯一無二」なもの
これが意味するところは、「ゴールドはファンジブル」「ダイヤモンドはノン・ファンジブル」と考えると、わかりやすくなります。ゴールドは「1gいくら」という相場で換金できます。たとえどんな形に成型されていようと、どこの金鉱山で採掘されたものであろうと、溶かしてしまえば同じ(代替可能=ファンジブル)だからです。
しかしダイヤモンドは、そうではありません。ダイヤモンドには4C(カラット/カット/カラー/クラリティ)という評価基準があり、ひとつひとつ異なります。「どれも溶かしてしまえば同じ。値段の違いは重量の違いのみ」というゴールドと違って、1つとして同じものがないダイヤモンドの価値は唯一無二、つまり代替不可能(ノン・ファンジブル)というわけです。
NFTにはさまざまな用途がありますが、中でも真っ先に成功事例となったのは、クリプトパンクスやビープルのようなデジタルアートでした。その理由は、まず、デジタルアートは「そのままトークン化できる」こと、さらに「ひとつひとつ異なり、その価値は代替不可能」という2点において、NFTとデジタルアートは親和性が高かったのでしょう。