他人と子供を比較する親は勘違いしている
また、親が発する子供を傷つける言葉として、他人と比較してわが子を貶める発言がある。周りにいる優秀な子供と比べて、子供がどれだけ劣っているのかを悪意を込めて指摘するのだ。
「なんでお兄ちゃんやお姉ちゃんができて、あなただけできないの?
「○○ちゃんを見習いなさい!」
「同じ塾の子に対して悔しいと思わないの?」
「あんな子たちに負けてもいいと思ってるのか!」
こうした親たちは、あらゆる子供は等しい能力を備えていると勘違いしている。
だが、人間には生まれ持った能力というものがある。スポーツや芸術に喩えればわかりやすい。血のつながったきょうだいであっても、足の速い子とそうでない子がいるし、絵のセンスがある子とない子がいるだろう。性格だってバラバラだ。
勉強の能力とて同じだ。仮にきょうだいが3人いたとすれば、3人がそれぞれ持っている能力は異なる。本人の努力や環境によって補える差もあるが、学習障害などのように容易には埋められないものもある。
「自分はどうしようもない人間なんだ…」
親がそうしたことを考慮せず、上記のような言葉を浴びせかけられれば、子供はどう感じるだろう。「きょうだいの中で自分だけが劣っている」「自分はクラスメイトよりダメな人間なんだ」と自分を卑下しはじめる。それは大きな劣等感となって、その子の心の成長を阻むことになる。
女子少年院で出会った少女がまさにそうだった。彼女は知的障害のボーダーだったにもかかわらず、毎日のように優秀な兄と比べられて蔑まれてきた。それは勉強だけに留まらず、日常生活の言動などあらゆることに及んだそうだ。
彼女はこう語っていた。
「あの人(母親)は、勉強だけじゃなくて、生活のこと、たとえばお皿を割ったとか、服を脱ぎっぱなしにしたってことで『他の子はこんなことはしない』とか『家族の中であなただけ血がつながっていると思えない』と言ってきた。人と比べてどんだけうちがバカなのかって言ってきた。
なんで気がついたら、うちは自分はどうしようもない人間なんだって思うようになってた。この家にふさわしくない、いちゃいけない人間なんだって……。だから、生きていること自体にごめんなさいって気持ちだった」