一流企業に入って出世することが「成功」ではない

私はコーチとして自己肯定感を高める方法を日々お伝えしている。自己肯定感とは「ありのままの自分を無条件に受け入れ愛すること」だが、条件にはこのようなものがある。

・見た目(顔、身長、体重など)
・成績、学歴
・仕事、役職、キャリア
・貯金額、収入
・友達の数、人気(SNSのいいねやフォロワー数など)
・パートナーの有無
・家族、親戚
・才能、能力
・性格
・習慣、行動
・過去に、自分がしたこと、しなかったこと、自分に起こったこと
・今、自分がしていること、していないこと、自分に起こっていること

このリストを見れば、これら条件のほとんどがいわゆる「常識」から来ていることが分かる。

できるだけ一流の大学に入り、できるだけ一流の会社に勤め、できるだけ出世し、できるだけ多く稼ぎ、できるだけ器量の良い人と結婚するのが人生の成功という「常識」に縛られているから、その成功像に合致していない自分が嫌になる。

生きることの本質は、人と比べることではなく、人から褒められることでもなく、自分が持っている能力を自分のペースで最大限に発揮して人生を楽しむことにある。それと同時に世界平和に貢献することと考えれば、このような「一流信仰」をごそっと手放すことができる。そして自己肯定感も爆上がりする。

2010年2月1日、東京で記者会見を行う稲盛和夫氏
写真=AFP/時事通信フォト
2010年2月1日、東京で記者会見を行う稲盛和夫氏

「その他大勢」では成功者になれない

能力はさほど変わらないのにビジネスで成功する人と失敗する人がいる。その違いはどこにあるのか。

それは、「常識」で自分を縛ってしまうか否か、常識破りな「面倒くさい人」になる勇気があるか否かで決まる。「これが常識だから」、「波風は立てたくないから」と思った途端、自分の頭で考えることをやめ、その他大勢に従うことになる。ビジネスで成功するにはその他大勢ではだめだ。ナンバーワンあるいはオンリーワンにならなければならない。

常識に従うことで自分は確実で安全な道を歩いていると錯覚しているかもしれない。けれども世界は常に変わり続けている。そんな不確実な世の中の「常識」にあぐらをかいていることこそ一番危険なことなのである。常に自分がなんのためにそのビジネスをしているのかという本質に照らし合わせて、いわゆる常識を精査していく。このプロセスを踏むか否かで成功と失敗が決まる。