「新型うつ病」への対処法

打たれ弱いこと自体は決して病気ではないが、最近では、不幸にして、部下がメンタルな疾患をわずらってしまうことも少なくない。その場合は、産業医や精神科医に診察してもらうことが何よりも肝心だ。

「面倒見のいい上司は、メンタルな疾患に罹患した部下の問題を一人で抱え込み、自分まで調子が悪くなってしまうことがあります。自分の健康を管理するうえでも、医師や上役に相談することが重要です」と五十嵐氏は話す。

メンタルな疾患にもいろいろあるが、その代表的なものが「うつ病」だ。「うつ病は従来、40~50代の人がよく患う病気でしたが、最近は20代後半~30代が中心になってきています」。五十嵐氏はその傾向についてこう語る。

特に最近、20~30代を中心に増えているのが、従来型のうつ病と異なる特徴を持つ「新型うつ病」だ。相場氏は、「新型うつ病という名前は正式な病名ではなく、基準すら明確になっていませんが、従来型のうつ病とは明らかに違う病態として増加しています」と説明する。

従来型のうつ病の特徴は、頑張りすぎて疲弊し、一人で悩みを抱え込んで発症してしまうことが多く、「自分が悪い」「自分はだめな人間だ」といった自責傾向が強い。

これに対して新型うつ病は、自分の好きな仕事や活動のときだけ元気になったり、自責感に乏しく、他責的で、自分のうつ症状を会社や上司のせいにしたりするといった傾向がある。

相場氏によれば、新型うつ病になってしまった部下と接する際のポイントは4つある。

1つは、「頑張れ」などの励ましの言葉を避けること。これは従来型のうつ病に限らず、新型うつ病でも同じである。

2つ目は、「○○してはいけない」「○○でなければだめだ」といった強制的・管理的な関わり、関係性を避けること。

3つ目は、愛情型のコミュニケーションを取ること。まずは相手を受容し、心の痛みをわかろうとするといったことだ。

4つ目は、自立促進型のコミュニケーション。相手が自分自身で行動していけるように接することで、これが新型うつ病への対応のキーポイントになる。

打たれ弱い部下を持つ上司は、何かと気を使うことが多くなりそうだ。しかし、自分のチームに打たれ弱い部下がいたとしても、うまくコントロールしてチームに貢献できる人材に育てることができれば、チームの業績が上がるだけでなく、上司自身のリーダーとしての資質も磨かれていく。打たれ弱い部下は邪魔な存在ではなく、上司を鍛えてくれる“切り札”だと考えてみてはいかがだろうか。

(宇佐見利明=撮影)
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