日本は水平分業化の流れに乗れなかった

これについて述べるためには、まず次の3つのポイントを整理しなければいけません。

・国際競争力の高いファウンドリ企業もファブレス企業もない
・半導体材料や半導体製造装置においては、今も高いシェアを誇る
・日本企業、外国企業を含め、いまだたくさんの半導体工場がある

まずは日本には国際競争力の高いファウンドリ企業もファブレス企業もない点です。

世界で水平分業化が進むなか、日本はその流れに乗ることができませんでした。

実際に日本の半導体は遅れていると論じるもののほとんどが、この点を指摘しています。

そういった意味では、日本の半導体が遅れているというのは間違った認識ではありません。

ではなぜ日本は水平分業化の流れに乗れなかったのでしょうか。

理由としては、日本企業の設計から製造までを一貫で行う垂直統合型へのこだわりがあったためと考えられています。

日本企業の「過剰品質なものを作りたがる傾向」

日本企業にありがちな体質として、自社の目の届くところでしっかりと管理し、過剰品質といわれるくらいに高品質なものを作りたがる傾向がありました。

自動車部品組み立て作業
写真=iStock.com/gyro
過剰品質なものを作りたがる傾向がある(※写真はイメージです)

そのためには一貫生産体制でなければならなかったのです。

実際に1970年代から1980年代にかけて日本が垂直統合型のビジネスモデルで世界を牽引できた裏側には、このようなこだわりがあったのも事実です。

けれども、それゆえに日本企業は水平分業化を取り入れることに大きく遅れました。

半導体の設計を行う会社や部門は、あくまでも電子機器メーカーの下請けという立場から抜けられず、ファブレス企業やファウンドリ企業に進化できなかったのです。

またベンチャー企業としてのファブレス企業は日本で誕生したものの、いずれも大きな成功を収めることはできませんでした。