ドアが開いていれば入っていい「校長室の開放」

そこで私がやったのが、「校長室の開放」だ。日常的に校長室の廊下側のドアを開け放って、クラスと名前を名乗ればいつでも入ってきて良いことにした。来客があっても、私が書類仕事をしていても、ドアが開いていれば入ってきて良い、と。

始業式で校長室の開放を告知したら、その日の休み時間に早速やってきたのは3年生の女子。“斥候せっこうの役割”だった。「今度来た校長は、いったいどんなやつか」、品定めしに来たのだろう。たぶん、たちどころにクチコミで伝わったはずだ。今だったら、LINEかツイッターかインスタか。しかしながら、その後しばらくは誰も来なかった。お客が切れた。

そこで餌を撒くことにした。漫画を300冊ほど、校長室に並べたのだ。その後、壊れたコンピュータをバラバラに分解して黄金に輝くチップを取り出すイベントを開催したり、トランプを置いておいて簡単な手品を見せたり……様々な仕掛けを繰り出したことで、次第に給食後の昼休みのお客さんが増えていく。

「玉手箱のような校長室」も楽しいんじゃないか

子どもたちの様子を見、ときに癒し、必要なら何らかの対処を講じるのだが、普段は黙って眺めているだけの部屋。あくまでも子どもたちの「居場所」。

藤原和博『学校がウソくさい』(朝日新書)
藤原和博『学校がウソくさい』(朝日新書)

4年目、5年目には、漫画を立ち読みする1年生で校長室が満員御礼になった。教室に居場所がない子かもしれない。エネルギーのある子は、給食後にはさっさと校庭に遊びに行くだろう。校長室で立ち読みしている分には、いじめられる心配もない。校長がなんとはなしに、そこにいるからだ。

小学校の校長が理科の専門なら、校長室を実験室にしても良いんじゃないかと本気で思う。大学で行なっていた研究を続けてもいい。そういう何かが起こりそうな、玉手箱のような校長室も楽しいんじゃあなかろうか。

こうして和田中では、図書室が第二の保健室に、校長室が第三の保健室の役割を担うことになった。

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