花粉症の利権を崩せれば、私は一生涯岸田首相を推す

花粉症に関しては製薬会社とテレビ局の利権も厄介である。

その昔、私が花粉症対策を提言したら、知り合いの医者から「私たちの仕事を奪わないでください」と文句を言われた。その医者いわく、もっとも儲かる病気は花粉症と胃潰瘍いかいようの2つだという。理由を聞いて納得した。どちらも根治はしないが、こじらせても死にはしない。つまり医者は良心がとがめることなく薬を処方し続けられるわけだ。

胃潰瘍はピロリ菌除去という治療法が保険適用になり、今や治せる病気になった。しかし、花粉症はいまだに根治せず、かといって死なない病気である。耳鼻科の医者や製薬会社にとっては金の卵を産む鶏だ。薬以外の手段で花粉症が解決すると困るのだ。

かつては病院が出す処方箋が必須だった花粉症薬も、規制緩和でスイッチOTC(市販薬)となり、入手しやすくなった。そのぶん医者の利権は削られたが、製薬会社にとって規制緩和は市場拡大のチャンス。毎年2月あたりからテレビCMを大量に流している。

テレビ局にとって製薬会社は大切なクライアントである。花粉症のつらさをあおっても、花粉症の抜本的解決策についてはあまり報道しようとはしない。その意味では製薬会社の共犯といえる。

花粉症薬は、放っておいても製薬会社が勝手に研究開発する。国の政策に求められるのは、スギに撒く飛散防止剤の開発支援だろう。スギ花粉の粒子は20~30ミクロン程度で風に乗って飛びやすい。スギに直接撒いて枯らす農薬や、スギが花粉を出して雲のように舞い上がったときに撒き、重たくして飛ばなくする薬剤の開発が待たれる。

今回、岸田首相は花粉症対策のメニューを数多く示したが、あれもこれもで総花的である。私が首相なら、予算はスギ伐採の補助金と飛散防止剤の開発だけに集中させる。前者が8割、後者が2割だ。それくらい思い切りやらないと花粉症から国民を救えない。

はたして岸田首相はリーダーシップを発揮できるかどうか。95年に自民党内で「花粉症等アレルギー症対策議員連盟」、通称ハクション議連が設立されたことがあった。花粉症対策を進める議員連盟だ。しかし、花粉症の強固な利権構造を崩すことはできず、活動の輪も広がらずに2009年に解散した。

岸田首相が花粉症関連の利権にメスを入れることができたら、私は永久に岸田首相の支持者になってもいい。それくらい花粉症の悩みは深いのである。

(構成=村上 敬)
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