半導体業界の負け組とわざわざ手を組む不可解

政府はこの頃、海外の企業や大学の誘致に積極的だ。しかし、いずれも虎の威を借るがごとく、看板だけを拝借しようとしているにすぎず、このままでは失敗するに違いない。

海外資本誘致の実態を、まずは半導体から見ていこう。

2023年5月18日、来日した海外半導体メーカーの幹部を歓迎する岸田文雄首相(右から2人目)。
2023年5月18日、来日した海外半導体メーカーの幹部を歓迎する岸田文雄首相(右から2人目)。(時事通信=写真)

半導体ファウンドリー(受託製造)で世界最大手に位置しているのは、台湾のTSMC。同社は熊本県に工場建設を進めており、恩恵を受ける地元が盛り上がっている。その熱狂ぶりに刺激を受けたのか、北海道でも半導体工場建設の動きがある。しかし、二匹目のドジョウはいない。熊本でさえ成功するかどうかまだわからないが、北海道は間違いなくそれ以下の結果に終わる。

今回、話を持ち掛けたのはIBMだ。IBMは半導体を自社でつくらないファブレス企業であり、製造をファウンドリーに委託している。同社は回路線幅2nmナノメートルの半導体を開発中で、その製造委託先として選んだのが、半導体国産化を目指して設立されたラピダスだ。

ラピダスは、半導体製造装置大手の東京エレクトロンでトップを務めたひがし哲郎氏の働きかけで、トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど国内8社が出資して2022年8月に設立された。資本金73億円の民間会社だが、日本政府から計3300億円の支援を得ており、事実上の国策ファウンドリーだ。新工場の建設予定地は北海道千歳市。25年初頭までに試作ラインを立ち上げ、27年の量産化を目指している。