酪農バブル期も上がり続けた乳価
酪農経営の活況をもたらした要因は、第一に、輸入飼料価格が低水準で推移したこと、第二に、酪農経営の副産物であるオスの子牛価格が通常は3万円程度であるのに、高水準の牛肉価格を反映して2016年から10万円を超え一時は15万円まで高騰したこと、第三に、デフレなのに、乳価は2006年に比べ現在の5割も高い水準まで上昇したことである(図表2)。乳価が引き上げられたので、雪印メグミルクは7月から、牛乳類で最大13.2%、88品目の価格を引き上げることを公表した。豊かな酪農家救済のための措置が、貧しい消費者の家計を圧迫する。
2022年は一時的にこの酪農バブルが弾けただけなのである。
穀物相場が変動するのは常識である。2008年、2012年、今回のように時々やりのように突出して上昇する。輸入穀物依存の経営を選択したなら、当然一時的な上昇に備えているべきだ。平均所得400万円の国民が、どうして1600万円を超える所得を長期間稼いでいた酪農家に、自己が収めた税金から補塡しなければならないのか? 物価高騰で食べられなくなった人など、われわれが救うべき人は他にたくさんいる。
実態②「離農はいまに始まったことではない」
酪農団体は離農が増えていると主張する。
しかし、経営が極めて良好だったときでも4~5%の酪農家は離農していた。離農の主な原因は、子供が跡を継ぎたがらない、高齢化で牛の世話が大変になった、自分が病気をしたなどである。これが6.8%(2023年1月)に増えたのは、酪農バブル時期の巨額の利益が減少しないようにする(つまり利益確定行為)という理由が多いのではないか。
なお、酪農家戸数は1962年の43万戸から2022年の1万3000戸まで大幅に減少したが、生乳生産は200万トン程度から2021年の765万トンまで拡大している。戸数は減っても生産は拡大してきた。ピークだった1996年の866万トンから100万トンほど減少したのは離農のせいではなく、お茶のペットボトルの出現で飲用牛乳の需要が大きく減少したからである。