無印銀行やユニクロ銀行が誕生してもおかしくない
このように、巨額のコスト負担なくスピーディに銀行業務に参入できることから、この先も、日常的に顧客と多くの接点を持ち、デジタル会員のIDを多数保有しているような非金融企業によるネオバンク設立が続くとみられる。
日本においても、例えば、無印銀行やユニクロ銀行、ビックカメラ銀行などが誕生してくる可能性もあるのかもしれない。
なお、冒頭のアップルに関しても、仮に日本において預金口座サービスを展開する場合、米国の場合と同様に、独自に銀行を設立するのではなく、ネオバンクの形で進出する可能性が高いのではないだろうか。メガバンクや住信SBI銀行などが候補になるのかもしれない。
住信SBIネット銀行を追う楽天銀行
国内のネオバンク支援事業では、住信SBIネット銀行が独走状態だが、ライバルの楽天銀行も追撃を始めている。
2023年の1月に誕生した第一生命によるネオバンクでは、「第一生命NEOBANK」とともに、「楽天銀行第一生命支店」が開設されている。そして、2024年春には、楽天銀行とJR東日本グループによる「JRE BANK」が開業する予定だ。
楽天モバイル事業で苦戦する楽天グループにとっても、2023年4月に株式上場した楽天銀行の価値を高めるべく、ネオバンク支援事業による業績拡大への期待も高い。
その他、ふくおかFGのデジタル銀行子会社である「みんなの銀行」では、BaaSの提供により、「みんなの銀行ピクシブ支店」と「みんなの銀行テンプスタッフ支店」を展開している。
また、GMOあおぞらネット銀行やSBI新生銀行に加え、北國FHDやきらぼし銀行などが、BaaSの提供によるネオバンク支援事業を打ち出していたり、三菱UFJ銀行がNTTドコモとスマホアプリ「dスマートバンク」をスタートさせている。
一方で、大多数の既存の銀行は、BaaSの展開において、「静観」だ。黒子としてネオバンク支援事業で手数料を稼ぐことができるものの、ネオバンクの設立支援は、異業種による銀行業務への進出を容易にし、敵に塩を送ることにもなるからだ。
ユーザーにはメリットになるが既存銀行には逆風
2023年4月にはペイロールが解禁され、2024年より、新しいNISAが導入されるなど、個人向け銀行口座獲得や資産運用ビジネスの展開にとって追い風が吹いている。異業種によるネオバンクにとっても、新規顧客獲得や顧客囲い込みのチャンス到来である。
異業種による銀行免許を持ったネット銀行は、その利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、シニア層に至るまで幅広い層で利用されるようになっている。それに加え、固定顧客を持つ異業種のネオバンクが参入することで、ユーザーにとっては選択肢が増え、多様で利便性が高いサービスが提供されるという、メリットになろう。一方で、店舗ネットワークと営業員を活用し、対面サービスを提供してきた既存のメガバンクや地銀などの多くには、逆風となりそうだ。