アップルが米国で預金サービスを開始した。金融アナリストの高橋克英さんは「正確にはアップル自体がアップル銀行を作ったわけではない。預金口座ができるのは、ゴールドマン・サックスの支店だ。日本でも同様の形での『ネオバンク』が続々登場している」という――。
東京都、丸の内のアップルストア=2022年10月20日
写真=picturedesk.com/時事通信フォト
東京都、丸の内のアップルストア=2022年10月20日

口座はゴールドマン・サックスにできる

2023年4月17日、米国アップルは、同社のクレジットカード「アップルカード」利用者向けに、年4.15%の利率で普通預金口座サービスを開始した。アップルカードを利用した際に付与されるキャッシュバックを自動入金でき、残高に対する利息が受け取れるようになる。

口座開設できるのは米国居住者で、手数料や最低入金額、最低残高といった条件はない。iPhoneからSSN(社会保障番号)を入力し、同意ボタンを2回押すことで、ものの30秒ほどで口座開設できてしまうという。

正確にはアップル自体が「アップル銀行」を作ったわけではない。米金融大手ゴールドマン・サックスとの提携によりアップルの普通預金口座はゴールドマン・サックス・バンクUSAの支店に作られ、管理される。預金口座の上限は米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護上限と同じ25万ドル(約3400万円)である。

金融サービスの拡大で顧客満足度を高める

アップルは、2014年にiPhoneなどを使った決済サービス「アップルペイ」とクレジットカードなどを管理する財布アプリ「ウォレット」の提供を開始、2019年には米国でゴールドマン・サックスと提携し「アップルカード」の発行を開始。2023年3月には、金利や手数料なしの後払いサービス(BNPL)である「アップルペイ・レイター」を提供している。

今回の預金口座サービスを加えることで、アップル経済圏のなかで、おカネが循環する仕組みの構築がさらに進むことになる。無論、新しい金融サービスを次々に提供することにより、顧客満足度を高め、経済圏拡大により、アップルの業績や株価に寄与させるためである。