「アップルなら安心」という強み
アップルの預金口座サービスは、米国において、経営破綻が相次いでいる地銀だけでなく、大手の銀行からも預金シェアを奪っていきそうだ。
アップルは、技術力と顧客基盤に裏打ちされた世界最高のブランド力と信用力を持っている。預金者にとっても、万が一の場合にも、アップルであれば預けていた預金が毀損したり、経営破綻する可能性が極めて低い、という安心感は大きい。
実際、米国のビジネス誌『Fortune』が選ぶ「最も賞賛される企業」で、アップルは16年連続で1位(2023年2月)に輝いている。また、S&Pによるアップルの長期信用格付けは、最上位のAAAである。
残念ながら、現時点では、日本において、アップルのクレジットカードや普通預金口座サービスの導入は発表されていない。
仮に導入された場合、iPhoneのシェアが高く、アップルのブランド力が浸透している日本においても、メガバンクや地銀など既存の銀行などのシェアを奪いながら、ユーザーの支持を得て、一大経済圏を形成していく可能性が高そうだ。
日本でも異業種による「ネオバンク」が続々登場
実は、アップルのように、日本においても、JALや高島屋、ヤマダデンキなど、異業種による「ネオバンク」と呼ばれる銀行サービスが広がってきている。ネオバンクは、自らは銀行免許を持たず、既存銀行のインフラを利用し、金融サービスを主にスマホなどで提供する。
例えば、「暮らしまるごと」戦略を掲げるヤマダホールディングスによる「ヤマダNEOBANK」は、ヤマダデジタル会員専用のサービスだ。預金、振込など銀行機能を備え「ヤマダポイント」が利用状況に応じて獲得できる。住宅ローンでは、家具や家電の購入費用も組み込めるという。
2022年6月には、金融を百貨店・商業開発に次ぐ第三の柱とする高島屋が「高島屋NEOBANK」の提供を開始。預金や振込などの銀行機能に加え、「友の会」のデジタル版にあたる「高島屋のスゴイ積立(スゴ積み)」では、年利15%相当の積立機能も提供している。
こうした企業には、自社の顧客に、独自の金融サービスを提供することで、顧客の利便性や満足度を高めるとともに、顧客を囲い込むことに加え、金融サービスを新たなる事業の柱にする狙いがある。