「使えない」部下の指導に悩むことは、マネジャーを経験した者なら一度は通る道だろう。チームの足を引っ張る「お荷物社員」戦力化のコツを心理学と行動科学マネジメントそれぞれの立場から解説する。

ブラックボックスは「見える化」せよ

上司の頭を悩ませる「お荷物社員」の具体的なケースについて考えてみよう。例えば女性が相手の場合、どういった方法が効果的なのだろうか。前出(>>記事はこちら)の福本氏、山中氏は「前提として感情的にならない」「相手を対等に見る」としたうえで、「同じ職種なら変に気を使うと逆差別になりかねない。面談を重ねることで相手の価値観を知り、同じ方向を向くようにアドバイスする」(山中氏)と言う一方で、「気軽に褒めるのが苦手で、声をかけられないことがある」と山中氏は躊躇する一面もあるようだ。

東京国際大学人間社会学部教授
角山 剛

1951年、新潟県生まれ。74年立教大学文学部心理学科卒。83年立教大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。主な共著書に『産業・組織心理学ハンドブック』『組織・職務と人間行動』など。

これについて角山剛教授は「女性は社内の人間関係が緊密なので、人前で叱ると女性全体に話がゆきわたり、上司に対する心象が悪くなる可能性もあります。既婚者にいたっては、ワークライフバランスのなかで頑張っているので、そういった点も考慮すべきだと思います」と語る。石田淳氏は「男性と同じ条件で叱るべき。区別すると周囲に逆差別と受け取られることもあります」と注意を促す。

一方、同じ女性でもキャリアが長い、いわゆる「お局様」に対しては、叱るのにためらいを感じると言う。

「もっとも難しい相手かもしれません。会社に長くいる分、ルールに対して独自の思い込みがあったり、新しいことへの取り組みを拒絶するケースも見られるので、親近感を頼りに、褒めて改善行動を促すことが多いです」(福本氏)

これについて石田氏は「その女性にしかできない仕事があるから、お局化するのです。前提として業務を標準化し、誰でもできるように『見える化』することで、お局が出現することを未然に防ぐといった対応も必要でしょうね」と、事前に対策を練ることを勧める。