インサイトは決め打ちせず、絶対に検証するべき理由

予算がなかったので、アンケートを作って、自分の友人や渋谷駅の通りすがりの人、マッチングアプリで出会った人などから、少しでもボイストレーニングを検討している人がいれば、片っ端から回答依頼をしました。

その結果、他のマーケターの仮説である「ボイストレーニングでは出会いを重視している」という人は全体のわずか2%しかおらず、「むしろ誰にも出会いたくなく、自分と向き合いながら本気で歌が上手くなりたい」という人が98%だったのです。

この結果には、他のマーケターたちも驚いていて、「あのまま検証せずに、出会い路線に変更しなくて良かったね」という話になりました。

もし「出会えるボイストレーニング10選!」みたいな訴求をしていたら、きっと本当にボイストレーニングを検討している層には何も届かなかったでしょう。

インサイトを考えるとき、無意識に自分の身近な人を想像しながら「きっとこういう気持ちなんだろうな」という仮説を立ててしまいます。

しかし「これは間違いないだろう」と思い込んでいるインサイトが、実際は全くの的外れだったということは多々あります。

インサイトは決め打ちせず、絶対に検証してください。

顧客の欲求を表にして捉える方法

真のインサイトを見つけるには、思い込みに囚われないことが大切ですが、これは思っているより難しいです。

また、顧客の中では整理しきれていない複雑な感情を、体系化して整理していく必要があります。

これらの課題をクリアするにはインサイトを表にまとめることがおすすめです。

インサイトを表にする目的は、「彼らが抱えている悩みの裏側にある、彼らが気づいていない“本当の”悩みを見つけること」です。

「彼らは日常において何を理想の状態と見なしていて、本当はどうなりたいのか」を発見します。

そしてその理想状態を実現するために考えている「表面的な欲求」を見つけます。

「表面的な欲求」の正しい解決策を彼らが知っているとしたら、すでにその欲求は解消されてなくなり、彼らは理想状態を実現して満たされているはずです。

しかし欲求がそこにまだ存在しているなら、それは「彼らが現状で思いつくことができる解決策では、解決ができない欲求」ということになります。

顧客の中では整理しきれていない複雑な感情を、体系化して整理していく必要がある
写真=iStock.com/NicolasMcComber
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そこで、「彼ら自身が現状で思いつくことができる解決策」をリストアップして、「それでも解決ができない理由」をそれぞれ出します。

これらがより深い“本当の”悩みになります。

その中から「自社の事業で解決できるもの」「顧客の理想実現に対して最もインパクトが大きいもの」を選び、事業として実現していきます。

書き起こしていくとすれば、次のような項目になります。

1.彼らにとって、理想の状態は何か。本当はどうなりたいのか。
2.その理想状態を実現するための、彼らの表面的な欲求は何か。
3.2に対して、彼らが現状、自分で思いつくことができる解決策は何か。
4.3が解決できない理由は何か(これが“本当の”悩みになる)。

これを表にまとめていきます。