にもかかわらず、ショルツ政権は、高インフレ下での脱原発という決断を下したわけだ。この決断を、ドイツの有権者はどう判断するのだろうか。次期のドイツの総選挙は2025年10月より前を予定しているが、この間にドイツの物価が安定し、また経済の活力も十分に回復したと有権者が評価すれば、ショルツ政権は続投となるだろう。

政権に逆風が吹き始めている

しかし足元の各政党の支持率を確認すると、ショルツ政権には厳しい逆風が吹いている。特に、ショルツ首相を擁する社会民主党(SPD)と同盟90/緑の党(B90/Gr)という脱原発をけん引した両党は、支持率が低下している。代わってCDU/CSUが支持率を伸ばしており、また極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」も復調している(図表2)。

【図表】ドイツ主要政党の支持率
(出所)INSA

このタイミングでの脱原発は、やはり、ドイツの社会経済に禍根を残す決断になるのではないだろうか。日本もまた、脱炭素化の取り組みに注力しているが、一方で最優先されるべきは、経済の血液であるエネルギーを安定的に供給することに他ならない。当たり前のことであるが、脱炭素化の潮流の中で、その当たり前が軽視されてはならない。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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