ドイツで異例の「賃上げスト」が相次いでいる

ドイツで4月20日から21日にかけて、大規模な賃上げストライキが行われた。まず、さまざまな職業の労働者団体が合併して2001年に設立された統一サービス産業労組「ヴェルディ(Ver.di)」が、ハンブルク空港など4つの空港の保安警備職員にストへの参加を呼び掛け、ハンブルク空港だけで8万人の利用者に影響があった模様だ。

また21日午前中には、鉄道交通労組(EVG)に加盟する旧国鉄のドイツ鉄道(DB)や、地方の公共交通機関など約50社の労働者によるストが行われた。EVGは経営側に対して12%または月額650ユーロ(約9万6000円)の賃上げを要求、またDBは5%の昇給と2500ユーロ(約37万円)の一時金の支払いを求めている。

EVGは4月25日に、またVer.diは27日から28日かけて次回の労使交渉を予定している。近年のドイツでここまで大掛かりの賃上げデモが行われることは、極めてまれである。

2023年4月19日、リスボンのサン・ベント宮殿でポルトガル首相との会談に臨むドイツのオラフ・ショルツ首相
写真=AFP/時事通信フォト
2023年4月19日、リスボンのサン・ベント宮殿でポルトガル首相との会談に臨むドイツのオラフ・ショルツ首相

消費者物価は前年比6.9%上昇

その最大の理由は、物価の急上昇にある。ヨーロッパの中でも物価が安定していることで知られたドイツの消費者物価だが、2022年は6.9%も上昇した(図表1)。

【図表】ドイツの消費者物価
(出所)国際通貨基金

1990年、東西ドイツが統一した(ドイツ再統一)。その際、旧東ドイツの復興需要の増大から、再統一後のドイツの消費者物価は1992年に5.1%にまで上昇が加速した。5%台のインフレを経験したのは西ドイツ時代の1982年以来10年ぶりのことだが、2022年のインフレはそのときよりもさらにひどかったことになる。