軽自動車は日本だけの独自規格

ではなぜ軽自動車はこんなに高いのか。

ハイブリッド車はより大きな車体により大きなエンジンを備え、モーター・バッテリーも備えているのに200万円程度で売ることができるのに、軽ターボ車は200万円近くしてしまう。その主たる理由は、「軽自動車」という規格そのものにあると思われる。

日本人にとって軽自動車というのは当たり前の存在であるため、海外にあまり行ったことのない人が海外に行くと、「海外では軽はあまり走ってないですね」などという感想を聞くことがある。そもそも軽自動車というのは日本独自の規格であり、海外で採用している国は1つもない。

軽自動車は終戦直後の通産省による「国民車構想」からスタートし、1949年に成立した規格で、本格的に販売が始まったのは1955年発売のスズライト(スズキ自動車)からである。

しかし軽自動車は、当初から価格面のメリットに乏しかった。手持ちの資料で最も古い1968年の価格表を見ると、スバル360の31万9000円に対し、700ccのトヨタ・パブリカは35万6000円と大きな差はなかった。

ハイブリッドなど存在しなかった当時、それでも軽自動車の燃費は相対的に良く、税制の経済的ベネフィットは現在以上に大きかったので、軽自動車はその価格でも売れたのである。

インド進出時は「パワー不足」でNG

軽自動車が安くならないのは、日本独自の規格のため海外での競争力がまったくないからである。

軽自動車の規格は徐々に大きくなっていて、現在では排気量660cc、全幅1480mm以下、全長3400mm以下、全高2000mm以下となっている。多くの軽自動車が前後左右に“見えない壁”で押しつぶされたようなデザインになっているのはこの規格のせいである。

このサイズは、世界的に見るとあまりに特殊で、とくに排気量が小さすぎ、横幅も狭すぎる。

スズキが1981年にインドに進出したとき、最初に作り始めた車種はアルトだったが、エンジンは800ccに拡大していた。当時高速道路が存在しなかったインドの交通環境でも、550cc(当時の軽規格)では「パワー不足」と判断されたからである。

全幅の狭さは狭い道路では有効だが、速度が増すと視覚的にも運転感覚的にも不安定感が出てしまう。また、必然的にドアが薄くなり、側面衝突時の不安を感じさせる。インドで売られている最新のワゴンRは日本で売られているものとはまったく異なり、全幅は1620mmと軽規格より140mm幅広い。