幅広いポリフェノールの効果

要するに、ポリフェノールが豊富な食品を摂ることは、細胞に対してストレスを解毒し、適応し、抵抗力を高めるトレーニングをさせるようなものだ(ブロッコリー、ニンニク、タマネギ、ポロネギ、卵、ホウレンソウ、ケール、グラスフェッドビーフ、魚、ナッツ類など、硫黄が豊富な食品をたくさん食べることによって、「あらゆる抗酸化物質の母」と言われるグルタチオンのさらなる産生が期待できる)。

ポリフェノールにはそれぞれ固有の利点があるが、科学はとりわけ有益なものを明らかにしている。たとえばエクストラバージンオリーブオイルに含まれるオレオカンタールは、体内の老廃物の処理システムであるオートファジーによる自浄プロセスを促進し、脳が自らプラークを掃除するのを助けることがわかっている。

またパセリやセージ、ローズマリー、タイムに豊富な「アピゲニン」というフェノール類は、神経発生を促し、シナプスの結合を強化する。たぶん、サイモン&ガーファンクルのあの名曲は、アピゲニンが霊感を与えてくれたおかげで生まれたのだ!

ほかにも、よく知られているポリフェノールと、それぞれの利点を図表2に挙げておこう。

認知機能が改善するブルーベリー

先ほど紹介したポリフェノールを豊富に含む食品の中から、ブルーベリーをピックアップしよう。

籠に入ったブルーベリー
写真=iStock.com/Kuvona
※写真はイメージです

一般的に食べられている果物や野菜のなかでも特にブルーベリーの抗酸化作用が高いのは、「フラボノイド」が豊富に含まれているからだ。フラボノイドは、ジーニアス・フードに多い多価(ポリ)フェノールの仲間だ(エクストラバージンオリーブオイルに含まれるオレオカンタールもフェノールの仲間だ)。

ブルーベリーに含まれるフラボノイドのうち、最も多いのはアントシアニンだ。これは血液脳関門を越えて脳に入り、記憶を処理する部位のシグナル伝達を強化するという。驚いたことに、このアントシアニンは海馬に蓄積するらしい。

私の友人で、シンシナティ大学医学部コグニティブ・エイジング・プログラムのディレクターを務めるロバート・クリコリアンは、ブルーベリーの記憶機能の効果を研究する分野の第一人者だ。クリコリアン博士は、ブルーベリーを摂ると認知機能が改善することを証明する論文を発表している。その一部を紹介しよう。認知症を発症するリスクのある高齢の被験者が、ブルーベリーのサプリメントを12週間摂ると記憶機能が改善し、抑うつ症状が軽くなり、空腹時の血糖も減ったという。

観察研究でも、説得力のある結果が出ている。1万6010人の高齢者を対象にした6年にわたる調査では、ブルーベリー(とイチゴ)を摂取した場合に、認知機能の老化が最大で2.5年遅れたという。また最近のレビューでは、人間が一般的な果物を摂ることと認知症のリスクとには何の関係性も見られなかったが、ベリーには見られたという。つまり、ベリーが認知機能の低下を抑制していたのだ。

●買うときの注意と食べるときのヒント●
新鮮なブルーベリーが望ましいが、冷凍のブルーベリーでもかまわない。冷凍ものは、たいていは生のものよりずっと低価格だ(置いてある店も多い)。だが必ずオーガニックのものを選ぼう。ブルーベリーは、スムージーやサラダ、おやつとして食べるにも最適だ。

ベリー類は、それぞれに固有の有益な成分が含まれ、どれも脳のためになるようだ。ブルーベリーの代用になるものにはブラックベリー、ビルベリー、ラズベリー、イチゴがある。