やたら新薬を勧めてくる医者は要注意

あるいは、やたらと新しい薬を勧めてくる医者も要注意です。

たとえば、ある新しい血圧の薬が出たとします。その薬が、これまでの同種の薬より副作用が少なくなっているとしましょう。その代わり、薬価は数倍高くなっています。

しかし、副作用が少なくなっているとしても、副作用というのは個人差がありますから、いくらこれまでの薬よりも確率が少ないといっても、その患者さんにとっての副作用がどの程度になるのかは実際に投与してみなければわかりません。

そして、今まで使っていた薬でとくに問題となるような副作用が出ていないのだとすれば、あえて新しい薬に変える必要は本来ありません。

薬価が高いということは、国の医療費負担も個人の負担も増えるわけですから、今、服用している薬できちんと血圧がコントロールされているのであれば、むしろ変えるべきではないのです。それなのに、わざわざ新薬を勧めてくるような医師は、どこからか圧力を受けている可能性があるのかもしれません。

たとえば、医局にいずれ戻るつもりでいる医師。上司にあたる教授が、その新薬の治験メンバーの一人だったとすれば、当然「なぜ君はこちらの薬を使わないのだ。副作用も少なくて有効性も高いという結果が出ているというのに。そんな不勉強なことでは医局には帰せない」といわんばかりの圧を感じていることでしょう。

その場合、医師が見ているのは目の前の患者ではなく、自分の今後の出世を握っている医局の上司です。

発売から20年経っている薬の副作用は予測可能

一方で教授のほうは、開発した新薬に関する講演会などに呼ばれて謝礼をもらい、新薬がいかに優れているかについてせっせと講演をするわけです。結局、新薬の利権に群がる人たちの餌食にされるのは、患者一人ひとりです。

当たり前の話ですが、発売されてから20年経っている薬というのは、20年飲み続けている人がいるわけですからデータが蓄積されており、どんな副作用が出るのかは予測可能なわけです。

一方、出たばかりの新薬は飲み続けて5年後、10年後の副作用はまったく未知数です。言うなれば、今回の新型コロナウイルスワクチンもこれと同じようなものですね。果たして5年後、10年後にどのような作用を及ぼすのか、まだ誰にもわかりません。

新型コロナウイルスワクチンを手に、サムズアップする医療従事者
写真=iStock.com/Boyloso
※写真はイメージです

いずれにしても、高血圧の新薬についても、現在服用している薬で副作用が出て困っているとか、今の薬では血圧がうまく下がらない、というような人にだけ使えばいいのです。

ところが、莫大な費用と時間をかけて開発した薬ですから、製薬会社としてはできるだけ多くの患者に新薬に切り替えさせたい。そこには、国の医療費の増加だとか、患者の副作用のリスクなどに対する配慮は微塵みじんもありません。