そもそも、高齢になるとがんの進行もゆっくりですから、放置していても5年、10年、大丈夫な場合も少なくありません。その5年、10年を食べたいものを食べて好きなことをして過ごすか。あるいは、5年、10年の余命では満足できない! というのであれば大学病院などで専門医による治療を受けるというのも選択肢のひとつでしょう。

そこで臓器を切り取り、抗がん剤などで体にダメージを与え、ヨボヨボの10年、15年をかろうじて生きながらえることになるかもしれないリスクに挑むか。これは患者さんやご家族など、当事者が最終的に決断することなのだろうと思うのです。

治療より生活を優先してくれるかどうか

最終的には、当事者である患者さんが、どのような治療を望むのかを決定すべきですが、現実的には、患者さん個人の気持ち、話にきちんと耳を貸そうとしない医者が少なくないというのもまた事実です。

最適な治療がわかるのは専門家である医師の自分であって、素人の患者が医者の言うことを聞かないのであれば、あとはどうなって知りませんよ、というような形で治療を投げてしまうような医師もいます。

ですから、まずはきちんと患者さんの話を聞こうとする姿勢のある医師を探すということが、何よりも大切です。

今出してもらっている薬が、どうも合わないようだから変えてほしいといったようなことをどんどん言ってみるべきです。そういうときに、患者さんが一人暮らしなのか、あるいは家族と同居しているのか、家はマンションなのか一軒家なのかなど、暮らしぶりにも思いを馳せながら、よりよい薬を考えて提案してくれるような医者は、よい医者です。

あるいは、自分の病院以外にどういったところに通院してどんな薬を飲んでいるのかについても常に気を配ってくれて、処方されている薬が大量になっている場合に、体への負担を考えて薬を減らすような提案をしてくれる医者もいい医者だと思います。これができるのは、きちんと総合診療ができる医者だということです。

逆に、一つひとつの検査データにばかり目が向いていて、データ至上主義のようになって、それぞれの症状に応じた薬を何種類も無頓着に処方してくるような医者は要注意です。

「どうなっても知りませんよ」と口にする医者は論外

そもそも、高齢になってくると服薬の管理だけでも一苦労です。朝食後に飲む薬、三食後に飲む薬、寝る前の薬、そこに一日2回の目薬などが加わってくると、今朝は薬を飲んだっけ? 目薬はさしたっけ? と混乱し、それだけでも大きなストレスになります。

最近は一包化といって薬を1回分ごとにまとめてくれるサービスを調剤薬局がやってくれますが、その場合、合わない薬を取り除くのが難しくなるリスクもあります。

加えて薬を飲むとだるくなる、頭がぼんやりする、と患者さんが訴えているにもかかわらず、「血圧は正常値を保っていますよ。薬はちゃんと効いているのだから、このまま続けましょう」とか、「ちゃんと飲まないと、責任持てませんよ」などと言って、患者さんの訴えに取り合わないような医師は、高齢者のかかりつけ医としては不向きだと言えます。

ましてや、「こちらの治療に従わないのであれば、どうなっても知りませんよ」とか、「寝たきりになりますよ」「死にますよ」などという脅し文句を平気で口にする医者は問題外です。

医師が両手を上げて「知らない」とジェスチャー
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若い患者さんであれば、多少体に負担をかけるような外科的な治療や強い薬を用いても、病気を克服して健康を取り戻せる可能性は高いですが、70歳を過ぎた患者さんは、できる限り肉体や精神への苦痛を軽減し、楽に生活できることを第一に考えた治療をするべきです。

脅かすような言動で自分の治療法を押し付けるような医師に、心身の健康サポートを委ねるのは難しいでしょう。また、受診するたびに暗いこと、怖いことを言われて気分が落ち込むような医師も困ります。