日本という国のポジショニングも相当上がった
スペインで「Rakuten TV」があり、フランスやドイツでのビジネス展開があり、世界に広がっていた電子書籍「Kobo」もあった。グローバルでブランド価値を上げることには大きな意味があった。しかも、スポーツを基軸にすることは、ヨーロッパでは極めて効果的であることも知っていた。安藤は続ける。
「CMにもブランド認知を高める効果があります。しかし、CMをたくさん流したりする以上の効果が、スポーツチームのスポンサーにはあるんです。そのことは、三木谷が一番よくわかっていたと思います」
何より、地域のファンごとスポンサーへの好感度を上げることができる。それが周辺に、さらには世界に広がっていくことが予想できた。ただし、FCバルセロナとなれば、契約の金額も過去にないスケールになる。
「そこが三木谷の決断力です。最終的にどれくらいのユーザーエンゲージメントになるのか、というのはすぐには測れない。それこそ、長期にわたらないと回収できない可能性がある。未知数なんですよ。ただ、これを決断したことで、ヨーロッパにおける楽天のブランド認知が一気に上がっただけでなく、日本という国のポジショニングも相当上がったのが事実だと思います」
契約公開前からパパラッチに追われる
日本企業が、世界ナンバーワンのサッカークラブのメインスポンサーになったのだ。世界のスポーツ界でも相当なインパクトをもって受け止められたのは、言うまでもない。
ことの大きさを安藤が実感したのは、2016年11月にバルセロナで契約について記者会見をしたときだった。FCバルセロナの本拠地、サッカーの聖地「カンプ・ノウ」で行われた会見には、世界中のメディアが集まっていた。
この直前まで、楽天との契約はまだ明らかになってはいなかった。ところが前日から、三木谷と安藤は、パパラッチにつけられていたのだ。
「FCバルセロナを応援してくれるメインスポンサーの動向というのは、それこそ地域の注目ごとだということを知りました。どこでどう漏れたのかわかりませんが、ずっとつけられていて、ホテルを出発して会場に向かうところまでが、後にニュースになったんです」
安藤は映像がテレビで報じられるまで、パパラッチの存在に気づかなかった。