きっかけはスペインの動画配信サービスの買収

日本国内はもちろん、世界を驚かせたFCバルセロナとのメイングローバルパートナー契約。そのきっかけは、楽天のグローバル展開にあった。2012年、楽天はスペインで動画配信サービスを展開していた「Wuaki.tv(ウアキ・ティーヴィー)」を買収した。本拠地はバルセロナ。

後にこれが、ヨーロッパにおける動画コンテンツ配信サービス「Rakuten TV」に結実するのだが、このサービスのプレゼンスがどんどん高まっていく中、当時、現地法人のもとに思わぬ情報がもたらされたのである。

「FCバルセロナがスポンサー探しをしている」

バルセロナといえば、サッカーの街。FCバルセロナについての情報も、もちろん飛び交うが、そのすべてが日本に入ってくるとは限らない。

当時のFCバルセロナのスポンサーは、中東の航空会社だった。中東は、政情が混乱していた時期。ヨーロッパでは、中東のイメージが悪化し始めていたのである。そんな中、ヨーロッパ随一の人気を誇るFCバルセロナが、中東の航空会社をメインスポンサーにしていることには危惧の声が上がっていたのだ。

バルセロナで密かな情報を得た現地法人のスタッフは、すぐに三木谷にViberでメッセージを送った。

「こんな話があるぞ。ミッキー、興味はあるか?」

スペイン・バルセロナにある、バルセロナの公式ショップと記章
写真=iStock.com/Tempura
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FCバルセロナのパワーを瞬時に判断した

スポーツクラブのスポンサーになることが、どれほどの価値を持つか、三木谷はよくわかっていた。野球の楽天イーグルスは、日本国内での楽天の知名度を、想像をはるかに超えて上げることになった。2013年のパ・リーグ優勝、さらには日本一を達成したときには、日本中を熱狂させることになった。

サッカーのヴィッセル神戸は、2003年、三木谷の生まれ故郷である神戸市の市長から支援を求められ、三木谷が個人でチームの営業権を取得、財政・運営のバックアップを引き受けていた。2015年には経営権が三木谷個人から楽天に移り、楽天グループとの連携を深めることで、その人気をさらに高め、楽天のブランドイメージ向上にも貢献。2020年には天皇杯で悲願の初タイトルを獲得した。

さらには国内では楽天・ジャパン・オープン・テニスのスポンサーにもなっていたが、グローバルでのスポンサード展開はなかった。そんな中での、いきなりのFCバルセロナである。安藤は回想する。

「ヴィッセル神戸の選手の獲得という意味でも、ヨーロッパリーグとのつながりは大きい。それを以前から三木谷は理解していました。だから、FCバルセロナがどれだけ人気で、どれだけすごい組織なのか、どれだけグローバルで強烈な存在なのか、ということも認識していたんです。だからこそ、そのパワーを瞬時に判断したんでしょうね」