失敗を乗り越えるにはどうしたらいいのか。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「ブッダは後悔を無意味なものだと考えた。失敗してもいい。大切なのは後悔することではなく、反省して『未来につなげる糧』にすることだ。自分の黒歴史を笑い話にするくらいがいい」という――。
※本稿は、大愚元勝『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
なぜ人は後悔をしてしまうのか
「あのときにこうしておけばよかった」
「なぜあんなことをしてしまったんだろう。やらなければよかった」
こんなふうに過去の出来事を思い出し、クヨクヨと落ち込んでしまうことがあります。そこには、やったことに対する「後悔」と、やらなかったことに対する「後悔」のふたつが存在するわけですが、根底にあるのは自分に対する「怒り」です。
仏教では、貪(欲)・瞋(怒り)・痴(無知)と呼ばれる3つを人間の心を蝕む毒として定義しています。後悔は「怒り」ですので、瞋のグループに属する感情です。
後悔は、記憶力があるからこそ、過去の出来事を覚えているからこそ生まれる感情であり、人間特有のもの。おそらく、人間以外の動物にはないはずです。
うちのお寺で飼っている犬やヤギを見ていても、彼らが「○年前のあの失敗を後悔している」とは、とうてい思えません。
人間はかなり高度な脳の使い方をしており、「あのときにこうしていたら、今とは違う結果になっていたかもしれない」という想像をめぐらせることができます。だから後悔が生まれるのです。
過去を悔やんでもいいことは一つもない
でも、当たり前のことですが、どんなに悔いたところで過去は変えられません。
私たちには、つねに“今”しかなく、今できることをやるしかない。
後悔の念を持ち続けていると、判断力やパフォーマンスの低下を引き起こします。考える必要のない過去に執着するあまり、今現在に悪影響を与えてしまう可能性があるのです。