“過去の病気”と思われている病気の中には、思い込みにすぎないものもある。

2009年、女性お笑いコンビ、ハリセンボンの箕輪はるかさんが肺結核を患い、大きなニュースとなったが、肺結核を知らない人も意外に多かったようである。

戦前戦後、日本人の死因第一位だった肺結核。どんどん死亡者数は少なくなったものの、世界的に見ると、今も日本は「中蔓延国」だ。2007年は新しく肺結核を発症した患者2万5311人で、人口10万人あたりの羅患率は19.8人。他国の羅患率はカナダ4.4人、アメリカ4.5人、スウェーデン5.4人といった状況なので、中蔓延国という表現も妥当だろう。

そして、死亡者数は07年が2188人でここ10年ほど横バイ状態。死因順位は27位である。

どっこい生きている肺結核は結核菌が空気感染で肺に入り、そこで増殖して炎症を起こす。この菌を含む痰を飲み込んでしまうと腸結核も併発してしまう。

症状は咳や痰、微熱、食欲不振、疲労感などで、風邪に似ているため、患者自身は結核と気付きにくい。症状が2週間も続く場合は、単なる風邪ではないと考えて呼吸器内科を受診すべきである。

検査は「基本的検査」と病原体の決定および治療法選択のための「確定診断検査」が行われる。

基本的検査で最も有用な検査が「胸部単純X線検査」。そのほか「血液検査」で全身状態を把握する。

確定診断検査は、いわゆる「細菌検査」である。

肺結核と診断され、咳などで結核菌をまき散らしている“排菌”状態であれば、入院しての治療となる。

治療の中心は薬物療法。イソニコチン酸ヒドラジド、リファンビシン、硫酸ストレプトマイシン、エタンブトール、ピラジナミドなどの薬を使う。初感染で軽度のときはヒドラジド単剤で治療。そのほか、結核菌の活動性や薬剤耐性など条件をチェックして2剤から4剤の併用で治療していく。

薬剤の服用期間は基本的には6カ月だが、これも患者の症状によって数カ月のびることがある。入院期間は排菌がなくなるまでなので、早い人では2カ月くらいで退院となるが平均的には4カ月程度である。

ただ、薬物療法で注意が必要なのは、きちっと決められた通りに薬を服用することである。治療がうまくいかなかった患者の原因を調べると「自分勝手な服用中止」だったりする。

薬物療法が今日の肺結核治療の中心ではあるが、その薬物療法でも喀血が続くような場合には外科治療の選択を考えてみるのもよいだろう。

【生活習慣のワンポイント】

再注目された肺結核だが、結核菌に感染すると誰もが発病するわけではない。発病の確率は約10人に1人、約10%である。発病させないパワーは、よくいわれるところの“免疫力の強さ”なのである。

だから、高齢者や糖尿病、肝疾患、腎疾患などの慢性疾患のある人は発病しやすくなる。最近は若い女性で無理なダイエットが原因で肺結核を発病するケースが目立っているのでご用心。

免疫力が最も良い状態にあるようにするには、「栄養バランスの良い食事を三食規則正しく食べる」「適度な運動(1日20分のウオーキングを2回)」「十分な睡眠(1日6~8時間)」「禁煙」「楽しい趣味でストレス解消」「適量のお酒(ビールなら中ビン1本、日本酒ならば1合弱)」などの習慣が大切になる。

このほかにお勧めしたいのが「笑い」である。大笑いすると免疫が最も良い状態へと変わるのである。それは、ワァッと涙したときも同じ。楽しいときには大いに笑い、悲しいときは我慢しないで泣いてしまう。これが重要である。