さらにソフトウェア処理でぼかしをかけたことで、ディテールは完全に失われた。拡大しても、ぼやけた円にまだらな模様が見える程度だ。このミニ画像をパソコンのモニターに表示し、室内を真っ暗にしてサムスン携帯でズーム撮影したところ、月面の凹凸感までリアルに再現された「月」の画像が撮影されたという。

公開されている比較画像では、撮影元の画像には存在しなかったクレーターの陰影などが、撮影後の画像にはっきりと出現していることがわかる。元画像の段階ですでに失われたはずのディテールが、Galaxyで撮影するとよみがえるという、なんとも不思議な現象だ。存在しない情報を、明らかにAIで描き足しているとみられる。

インフルエンサーの独自検証で大炎上

ヴァージは、通常行われる鮮明化の範疇を超え、「単に新しい月、フェイクの月が現れたのだ」と指摘する。コントラストの強調などにとどまらず、ディテールを「創造してしまう」ため、「良くも悪くも、この時点で多くの人は、得られる画像が捏造だと感じることだろう」と記事は論じている。

レディットのユーザーはその後、さらなる検証を行った。月の画像の一部をグレーで四角く塗りつぶし、それをS23 Ultraで再撮影するテストだ。元画像では平坦なグレーとなっている四角の領域だが、S23 Ultraで撮影すると再び、不思議なことに月面のディテールが出現した。

この投稿を受け、テクノロジーに詳しいイギリスの著名YouTuberのアルン・マイニ氏は、独自に追加検証を行っている。

登録者1300万人の彼は、「サムスンは何年も、自社の携帯が最大100倍のスペースズーム能力を備えると広告している。実際にサムスンの携帯を手に取れば、信じられないほど月にズームし、5000ドル(約66万円)のプロ用カメラ機材で撮るよりもむしろ鮮明な写真を撮ることができる。とても感動的だ」と述べる。

そして氏は続ける。「しかし、ネットではっきりと証明されたのだ。フェイクだった、と」

マイニ氏は検証として、ぼかした月の画像を紙に印刷して円く切り抜き、これを真っ暗な空間に糸でるしてズーム撮影した。すると、氏のGalaxy S23 Ultraは、当該の紙片を月だと認識。得られた画像には、印刷された紙には存在しなかった月面のディテールが、はっきりと描き込まれていた。