米ギズモードは、リリースでの説明をもってしても、サムスンが一眼レフ並みの望遠性能を備えるかのような広告を展開した事実が許容されるものではない、と指摘している。
海外メディアからは、純粋に「100倍ズーム」を信じる記事も出ている。米CNN系列の製品評価サイト「アンダースコアード」では、スペースズームなどを挙げ、「息をのむような写真を撮るために万端の装備を整えている」と紹介している。夕方の月を収めた写真を掲載し、「こんなことは他の携帯ではできない」と記事は述べる。
写真のAI処理はどこまで許されるのか
Galaxyの炎上に伴い海外では、AI処理がどこまで許されるかという議論が盛んに交わされている。近年のスマホのカメラには、AI処理が欠かせない。カメラが捉えた画像をそのまま記録している例はむしろまれだ。
近年の多くのスマホでは、カメラアプリを立ち上げたその瞬間から、ユーザーがシャッターボタンを押すまでもなく、高速に撮像を繰り返している。この段階では写真として保存されないので、私たちが気付くことはない。
ユーザーがシャッターを切った瞬間、その直前・直後に撮影した複数の画像が解析・統合され、ベストな1枚として写真アルバムに保存される。その際、スマホ内部では、各種のAI処理が自動で加わっている。
手ぶれの激しいフレーム(コマ)を除去し、異なる露出で撮ったフレームからそれぞれ暗部と明部の階調が優れたものを選んで合成し、肌が自然に見えるようトーンを整え……といった具合だ。
こうした写真は、ある意味でAIが手を加えた写真だ。では、ユーザーが「だまされた」と感じるかというと、おそらく大半の人々はそうは感じないだろう。大切な瞬間が逆光や手ぶれで台無しになるよりも、むしろ「救われた」とすら感じるかもしれない。
撮影後の演算によって品質を高めるこのような手法は、伝統的なカメラでの撮影に対し、「コンピュテーショナル・フォトグラフィー」と呼ばれるひとつの専門分野として成立している。
一部のユーザーはこうした事情を踏まえ、Galaxyの事例についても、別段問題ではないと考えているようだ。視力のよい人であれば月面の模様を視認できる人もいるため、AI処理はあくまで見た目の印象に近づけているだけだと捉えることも不可能ではない。
サムスンはなぜユーザーを失望させたのか
独自に検証した前出のYouTuberのマイニ氏は、近年のスマホは顔にすら美顔効果を適用していることなどを挙げ、月面のディテールについては本来であれば炎上するような件ではなかったはずだと指摘する。
だがGalaxyの場合、真相を知ったユーザーの大半が「だまされた」と感じ、炎上状態となってしまった。多くのユーザーを失望させた以上、何らかの問題はあったと考えられるだろう。サムスンはどこを間違えたのだろうか。