東京23区より面積が広いのに、小中高校がそれぞれ1校ずつしかない

たとえば、公衆トイレの清掃は、市が清掃などの維持費をまかなえなくなったため、地域の人たちが声をかけ合い、交代で行うことになったと聞きました。

鹿のフン拾いも、市の予算難から途絶えてしまった「ゆうばり桜まつり」を復活させるために、本田さんをはじめとする有志が自発的に行っているものでした。

図書館は運営費を捻出できずに廃止され、蔵書を保健福祉センターに移して、「図書コーナー」という形でほそぼそと貸し出しを続ける状態。そのお手伝いや子どもたちに絵本の読み聞かせをするボランティアグループが複数あり、私も所属していました。

学校の少なさにも驚きました。これは財政破綻だけが原因ではありませんが、夕張は東京23区より面積が広いにもかかわらず、小中高校がそれぞれ1校ずつしかないのです。最盛期には小学校22校、中学校9校、高校6校があったそうですが、急速な少子化によって統廃合が続いた結果、小中学生のなかにはバスで40分かけて通学しなければならない子もいました。

「行政サービスは全国最低レベル、住民負担は全国最高レベル」

行政サービスが低下する一方で、市民の負担は増えました。市民税の個人均等割は3000円から3500円になり、国内で最高レベルの負担に。自治体ごとに決められる軽自動車税は、破綻前の1.5倍に増額。

鈴木直道『逆境リーダーの挑戦 最年少市長から最年少知事へ』(PHP新書)
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下水道料金は、10立方メートル当たり1470円から2440円(約1.7倍)に値上げ。ゴミの収集は1リットル当たり2円に有料化されました。45リットルの家庭ゴミ1袋を出すたびに、90円もかかってしまうことになります。

施設使用料も5割増しになりました。仮に、会費を出し合って市の施設を借り、年に12回サークル活動をしていたグループがあったとすると、破綻前と同じ会費では年に8回しか活動を楽しめなくなってしまったことになります。

当時の夕張市は、「行政サービスは全国最低レベル、住民負担は全国最高レベル」と言われていました。そのため、さらに転出者が相次ぐ「負のスパイラル」に陥っていたのです。

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