※本稿は、西剛志『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
なぜ、理性だけで考えると判断を誤ってしまうのか
あなたは、理論派と感覚派だったら、どちらのほうでしょうか?
わたしは理論派! 絶対に感覚派! もしくは自分は両方! など、いろいろなパターンがあるかもしれません。理論と感覚はどちらが優れているのか?
古くはソクラテスの時代から議論されてきた人類の永遠のテーマの1つですが、21世紀に入って、コロンビア大学で面白い研究が行なわれました。
アメリカンアイドルという米国で人気のオーディション番組があるのですが、視聴者を理性で考えるグループと、感覚で決めるグループに分け、誰が最後に優勝するか予想してもらうという実験です(※1)。
その結果、理性で考える人(感覚を信じない人)の的中率は21パーセントだったのに対し、感覚を信じる人はなんと的中率が41パーセントにもなったのです。
これは「感覚的なお告げ効果(Emotional oracle effect)」と名づけられました。わたしはこれを「直感バイアス」と呼んでいます。
たとえば、この「直感バイアス」は将棋の世界でも見られます。将棋で次の一手を打つとき、通常は論理的に相手の出てくる戦法を考えるのが一般的です。
しかし、将棋のプロ棋士のなかでも名人と呼ばれる人たちほど、考えるよりも最初にこれだと思える一手がまず直感で出てくるそうです。
またサッカーの世界でもスーパープレイのような通常ありえないシュートを打つ瞬間がありますが、このとき、頭で考えてプレイしていたら間に合いません。まず頭で考えるより先に体が動いていたという人がほとんどです。
優れた経営者ほど、論理だけでなくときとして直感を信じる傾向が強いのですが、ほかの研究でも、理性だけで考えると、判断を誤ってしまうことが報告されています。