50歳以下では子どものいない既婚女性の幸福度が上昇

子育て期にあたる50歳以下の既婚女性に分析対象を絞った場合、やや結果は異なってきます。

子持ち既婚女性の幸福度が経年的に上昇していないという点は変わらないのですが、子どものいない既婚女性の幸福度が上昇傾向にありました。この結果、子持ち既婚女性と子どものいない既婚女性の幸福度の差が緩やかに拡大したのです。

なぜ子どものいない既婚女性の幸福度は上昇したのでしょうか。この背景には、「結婚したら子どもを持つべき」という社会的なプレッシャーの低下が影響していると考えられます。国立社会保障・人口問題研究所の『出生動向基本調査』によれば、「結婚したら子どもを持つべきか」という問に対して「どちらかといえば反対」、「まったく反対」と回答する割合が2002年で22.4%だったのですが、2015年には28.9%へと上昇しています。また、この間、妻が45~49歳の夫婦で、子どものいない割合が4.2%(2002年)から9.9%(2015年)へと増えています。

子どものいない夫婦が着実に増えており、以前よりも受け入れられやすいライフスタイルになっています。これが子どものいない既婚女性の幸福度の上昇に寄与したと考えられます。

笑顔があふれる女性
写真=iStock.com/maruco
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アメリカでは子持ち女性の幸福度が相対的に上昇

日本では子持ち既婚女性と子どものいない既婚女性の幸福度の差が変化していないか、もしくは拡大傾向にありますが、アメリカでは逆に縮小傾向にあることがわかっています。日本とはちょうど真逆です。

この点はアリゾナ州立大学のクリス・ハーブスト准教授らが分析を行っています(*4)。彼らの分析によれば、アメリカでは子持ち女性の幸福度が経年的に変化していないものの、子どものいない女性の幸福度が低下傾向にありました。この結果、子持ち女性と子どものいない女性の幸福度の差が縮小したのです。

なぜアメリカでは、子どものいない女性の幸福度が経年的に低下したのでしょうか。この点に関して、ハーブスト准教授は子どもを持つことがコミュニティーとのつながりや政治への関心、友人との交友関係を維持し、幸福度の向上につながる可能性があると指摘しています。子どもがいない場合、社会や人とのつながりが狭くなり、これが幸福度低下の原因となるわけです。