子どものおもちゃから着想を得た卵パック
大阪にある食品包装容器の製造・販売会社のダイヤフーズ(現エフピコダイヤフーズ)は、当初紙パックを開発しました。しかし、日本ではそれまで対面販売だったので、中身の見えない紙パックは卵の鮮度を確認することができないために不評でした。
そこで塩化ビニールで楕円形の窪みのある透明のパックを開発しました。しかし、それだと窪みに入れた卵に直接衝撃がかかり、輸送中に卵が割れてしまいました。
ある時、社長は、子どもがパイプを咥えて息を吹いてボールを浮かすおもちゃで遊んでいるのを見かけました。それを目にした社長は、パックの中で卵を宙吊りにすることを閃いたのです。そして卵の入る部分を八角錐にした容器を開発し、卵が容器の上下に当たらずに浮いているかのような状態を実現したのです。
こうした閃きも、この社長が常に想像力を稼働させ、「想像の網」を張りめぐらせていたからこそ、子どものおもちゃを見た時に自分が求めていたことと結びつけることができたのでしょう。
「アフリカ人の水汲みを楽にする」井戸掘り以外の方法
全世界で、極度の貧困の中で暮らす人々の数は、1990年には全世界で約19億人(世界銀行調べ)いました。現在は半分以下に減少しましたが、まだ約7億人(同、2015年)もの人々が苦しんでいます。
水道インフラが十分に整備されていない発展途上国では、今でも何キロも先まで水を汲みに行くという作業をしなければなりません。サハラ砂漠以南のアフリカで暮らす人々の中には、1日に何度も数時間かけて水を汲みに行かなければならない子どもや女性たちがいますが、重く運びにくい容器を、長時間背負ったり、持ったりすることは大変ですし、背中や首を痛める危険性もあります。
子どもたちは水や食料や燃料を得るために働かねばならず、5人に1人は小学校に行けず、卒業する前に途中で退学せざるを得ない子もいます。こうした状況を改善するためにはどうすればいいのでしょうか。
井戸を掘る、近くの水源から水道を引いてくる、というアイデアはすぐに思いつきそうですが、これらを実行するにはそれなりの資金や資材、労力がかかりますし、アフリカは日本とは地理的・気象的条件が大きく異なりますので、そう簡単ではありません。
この問題について、画期的な容器を開発することによって解決しようとした人がいました。では、それはどのような容器だと思いますか。
私はこの問いをテーマに、学生や社会人を相手に講義をすることがあります。4人1組になってもらい、課題を話し合ってもらうグループワークです。
発展途上国で子どもや女性が水を運ぶのに苦労していました。ある時、水を運搬する容器が発明されたことで、5時間かかる水汲みが1時間で済むようになりました。それはどのような容器でしょうか?
すると、だいたい7割から8割くらいのグループが、「転がす容器」という案を出します。つまりここまでは、かなりの人が思いつくアイデアということになります。