できる営業はできる限りパクる

「できる営業」は、資料をゼロから自分でつくろうとしません。提案の時も、いきなりパワーポイント(以下“パワポ”)をつくり始めません。まず、何かベースにできそうな既存資料がないか探します。過去似たような提案をしていれば、それを参考にした方が早いからです。簡単にいうと、できるだけパクろうとします。

「できない営業」は、類似提案を探そうとしません。なぜかゼロからつくりたがります。そのくせ放っておいて、期限ギリギリにやろうとします。直前に慌ててつくった資料はすぐわかります。ちゃんと準備できていない提案は底が浅く刺さりません。

「パクる」というと語感は悪いですが、スポーツなどその道の達人の常道です。質を担保しながら効率化する賢い工夫の一つ。学ぶの語源は真似ぶ(まねる)です。芸の道における学びの基本は「習+守破離」。まず型を習う(真似する)ところから始まります。「イノベーション」もパクリの一種です。

創造的といっても、すべてゼロから創造するわけではありません。イノベーションは新結合、すなわち、既存の知識や技術をくっつけて新しい価値を生み出すことです。

提案であれば、よい提案を基本の型としてパクる。案件ごとの背景や条件に合わせて言葉を変え、少しオリジナリティを出す。これが時間と手間をかけずに、それなりの提案の質と効率を両立させる「できる営業」の提案テクニックです。

受注のためにはよい提案が必要ですが、提案書作成は営業のメインの仕事ではありません。あまり時間をかけずに効率化を図りながら、それなりの提案レベルを目指します。

資料を説明するビジネスパーソン
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東京との時差を利用したFさんの例

全国で支店を展開する大手旅行会社J社のFさんは、地方の仕事は“時差商売”で十分いけると言います。大手とはいえ、Fさんの支店は数人しかいないので提案の専門家はいません。そこで、東京本社の提案情報が集まる部署にいる同期に電話してよい資料がないか相談し、参考になりそうな資料をメールしてもらうそうです。

東京では新鮮味のない使い古されたネタでも地方とは情報格差があるので、この「時差商売(時差提案)」でほとんどカバーできると言います。上手なパクリ方です。