大手の工場が協力すれば1日で何万台でも生産できる

――健康面、衛生面以外にはどんなメリットがありますか?

避難所で段ボールベッドを使うべき2つ目の理由が供給面です。段ボール工場は日本中にあります。大手の工場なら1日5000台は楽々と生産できる。うちの工場でも最新型の段ボールベッドなら1日1000台、古いタイプなら3000台はつくれます。

いまの段ボールベッドはミカン箱サイズ――A式と呼ばれる段ボール箱24個を並べて台にして、上に一枚の段ボール板を敷くだけ。段ボールベッド1台分を4~5秒で生産できる機械が、日本中に点在する段ボール工場に約1000機以上設置されています。

段ボールベッドが必要とされるのは、緊急時です。仮に熊本で再び地震が発生し、急遽5万台の段ボールベッドが必要になったとしましょう。熊本の段ボール工場は停電や被災の影響で稼働できない。その場合、福岡にあるいくつかの工場で2万台、鹿児島、大分、佐賀で1万台ずつ生産し、被災翌日には必要な数を熊本の被災地へと供給できる。

段ボールだからインフラになりえる

――なるほど。そこがふだん使っている段ボールを活用する強みですね。

そうなんです。もしもパイプベッドだったら、海外の工場に発注してから生産する。日本に届くまで数カ月くらいかかってしまいます。

大手の段ボール工場は全国各地に約400カ所、我々のような中小の工場は約2500あります。段ボール工場は災害時に被災者を、そして避難所を支えるインフラになりえるんです。

現在は、避難所を運営する上で段ボールベッドなどの支援物資が必要な場合、災害救助法の対象になって費用は国庫負担となります。いまの避難所に行くと段ボールベッドが設置された光景は当たり前になりました。それだけ段ボールベッドの有用性が広く認知されました。でもそこにいたるまでは本当に苦労したんです。