日本の英語教育に異変が起きている。和歌山大学名誉教授の江利川春雄さんは「学習指導要領が変わり、学習する内容が大幅に増えたため、教師も生徒も疲弊している。これでは英語嫌いを増やすだけだ」という――。

※本稿は、江利川春雄『英語と日本人 挫折と希望の二〇〇年』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

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英語教育で生徒も教員もボロボロに

「英語の学習を早期に諦めてしまう子どもが増えた。英語の教員が学校に出てこられず病休になった。日本の英語教育を何とかしないと生徒も教員もボロボロにされてしまう」(岐阜・小学校教員)
「これまでも持ち帰り仕事は大量にありましたが、とうとう4時台に起きるのが通例になりました。30年以上の教師生活で、今年度が群を抜いて一番大変です」(東京・中学校教員)

これらは英語教員サークルのメーリングリストへの書き込みだ(2022年1月)。コロナ禍の2020(令和2)年度から実施された小学校学習指導要領によって、外国語が5・6年生で教科化され、読む・書く活動や成績評価も必要になった。中学2年で習っていた不定詞なども小学校に下ろされ、600〜700語という過大な語彙ごい(新出単語)がノルマとされた。小学校段階で英語の成績が二極分化し、英語嫌いになって中学校に入る子どもが増えた。

しわ寄せをもろに受けたのが中学校だ。時間数は週4時間のまま変わらないのに、語彙が従来の1200語程度から1600〜1800語に増やされ、それに小学校での語彙が加算される。そのため、2021年度から中学生が接する語彙は2200〜2500語にまで増やされ、旧課程の約2倍になった。