一般人が名簿を流す

――カタギが個人情報をカネにしているのか。

【土井氏】カタギ個人もですが、会社ぐるみの場合もあります。

例えば、正規の合法な名簿屋がある。これは、セールスマンのための名簿を扱う会社です。学習教材会社なら、ファミリー名簿を買うんです。

しかし、こうしたカタギの名簿屋さんも、名簿のオイシサを知ったら、悪いほうに流れていくケースもあります。

高級ブランドや高級車の購入者名簿が欲しければ、店の従業員に接触して、カネをチラつかせてデータのコピーを取らせるとか、さまざまな方法があります。

あと、カタギさんに「家にカネありそうなところ知らないか。そこに本当にカネがあれば、(儲けの)10%やるから教えてくれない?」って言うと、必死で調べてきますよ。こうした生の情報はありがたい。自分がタタキ(強盗)の実行犯にならなかったとしても、情報自体が売れるんですから。

大体、名簿がカネになるようになったのは、特殊詐欺が始まってからじゃないですか。昔は、名簿なんか捨てていました。パソコンの中の名簿なんか普通に放置されていました。

ノートパソコンで作業する人の手元
写真=iStock.com/Tippapatt
※写真はイメージです

しかし、これがカネになる現在ですと、わざわざ名簿を盗みに入る者も出てきた。名簿は、貴金属や現金と違って、セキュリティーの甘いところに保管していますから、盗みやすい。さらに、盗まれても、被害者はお客に責められるから、被害届を出さないんじゃないですか。

ダークウェブでの取引の実態

【土井氏】2013年アメリカのFBIに潰された「シルクロード」というウェブ闇市がありました。いわゆるダークウェブの草分け的存在です。カネの出先が分からないビットコインは、こういうところで使われる。裏のメルカリみたいなものです。

当時、ダークウェブは英語版しかなかったのですが、現在は日本語のサイトも存在します。シルクロードは薬物専門でしたが、昨今のダークウェブは、名簿、銃器、シャブ、殺人請負、児童ポルノ、キャッシュカードから臓器まで、何でも売られています。

もっとも、違法サイトですから、商品が届かなくても被害届は出ないので、詐欺も横行しています。日本は税関が厳しいので銃などは注文できないから、大麻の種子などが人気のようです。

だから、今回の事件で使用された名簿が、どこで入手されたかということは、ルフィらが帰国して、当局によって尋問されないと分かりません。要は、名簿の入手先は複数存在するということです。