不安が募り眠れないBさん

Aさんとは違う種類の不眠の訴えで面談に来たのは、40代の女性Bさんでした。

Bさんは業務部でもう20年近く働き、特に仕事や人間関係にストレスはありません。普段は趣味のピラティスとワインを適度に楽しみ過ごしているが、たまにどうしても不安になり眠れないことがあるとのこと。とくに最近は、そのせいで眠れるか否かが不安になってますます眠りがおかしくなってきたと産業医面談に来られました。

眠れない時は、仕事の納期を無事に守れるのだろうか、正確で質の良いものをしっかりと生み出せているかどうか等々、普段は気にならないことが心配になってしまい、ずっと頭にそのようなことばかりが浮かんでくるとのことでした。聞いてみると、納期を守れなかったり低い評価を受けたりしたことは一度もありませんでした。

Bさんは多忙期にこうなるとは限らず、不規則だがたまにそういう気分になってしまう。最近は、そのために寝ること自体が怖く感じてしまうことさえもあり、そのせいで睡眠の質が悪化してきているようだとおっしゃいました。連続する時もあり、多少仕事に影響している気がして、ますます不安が募りそうだという、よくないサイクルの入り口にいるようでした。

腐食した金属の文字で描かれた「FEAR」の文字
写真=iStock.com/elinedesignservices
※写真はイメージです

不安や恐怖を感じている場合は処方が必要

産業医的にBさんは、Aさんよりもしっかり対処が必要な状態と感じました。

Bさんは現在、起こっていないことに対して不安や恐怖を感じてしまって、そのせいで睡眠の質が低下しています。そしてその頻度はだんだん増えてきているようです。日中の仕事への影響が出るのは時間の問題かもしれません。

では、Bさんはどうすればいいのでしょうか。

この「今日もうまく眠れないかもしれない」という不安に対処し、ちゃんと眠れる経験(成功体験)をすることが、Bさんの睡眠改善には必要でしょう。例えば、睡眠薬を処方してもらい一度飲んでみる。その日は朝までぐっすり眠れることがわかると、眠れない時は同じ薬を飲めばいいのだとわかり、その安心感から、枕元に薬を置いておくだけで睡眠の質が改善する人は多くいます。睡眠薬の代わりに睡眠サプリでもハーブティーでもアロマでもいいですが、睡眠薬がうまくいくことが多いのでまずはおすすめしています。いろいろ試して、最終的にはよく眠れる睡眠前の過ごし方をパターン化できると、不安になることなく入眠できると思います。